自律分散する編集部を目指して:「外部編集員」第4期募集のお知らせ【特別ニュースレター】
編集を生業としない「外部編集員」を迎えた編集体制を採用する、コクヨのオウンドメディア「WORKSIGHT」。今回は、2025年度の外部編集員募集にあわせ、「公開編集会議」をはじめとするWORKSIGHTならではの活動を紹介します。
photograph by Hironori Kim
2011年の創刊以降、働き方やオフィス空間を紹介するメディアとして活動を展開してきたWORKSIGHTは、オフィスという切り口から社会そのものへとスコープを広げるために、2022年7月にコクヨが標榜する「自律協働社会」のゆくえを考える新たなメディアへとリニューアルしました。
リニューアル以降のWORKSIGHTは、企業メディアのあり方を根本から問い直すために、コクヨのリサーチ&デザインラボ「ヨコク研究所」と、編集やライティングを生業とせず多様な興味や経験をもつ「外部編集員」による企画・取材を、「黒鳥社」がサポートするユニークな編集体制を採用しています。
編集長・山下正太郎(コクヨ ヨコク研究所所長)は、WORKSIGHTというメディアの一風変わった取り組みについて、ニュースレター「『企業自我』を更新し続けるために:WORKSIGHTの2年間の活動から見えてきたもの」にて、以下のように説明しています。
重要なのは、メディアというのは発信装置ではなく、受信装置だということなんです。(中略)特定のテーマに絞らずに、外部編集者のもつ生活者としての視点から社会を眺めるというのはとても面白い体験で、本当に思ってもみなかったようなネタが次々と出てきます。
WORKSIGHTの編集会議で行われている議論は、新しい概念が社会に受容されているプロセスを疑似的に実践する場であり、それを企業内部へと取り込む装置なのだと思っています。
「企業自我」を更新し続けるために:WORKSIGHTの2年間の活動から見えてきたもの
2022年7月に「抵抗としてのオウンドメディア」を掲げるリブート宣言をして以降、多様な職に就くメンバーを外部編集員として迎え入れるなど、独特の試みを続けてきたWORKSIGHT。なぜ、わざわざこうしたメディアを手がけるのか? コクヨ ヨコク研究所所長・WORKSIGHT編集長の山下正太郎と改めて、これまでの歩みと今後の狙いを、膝をつき合わせて語り合いました。
このように、コクヨが思い描く「自律協働社会」を、1社だけではなく、むしろ社会像に共感して一緒に目指す仲間とともにその未来のあり方自体から考えていく運動体としてWORKSIGHTは活動しています。
外部編集員としてこれまでに、デザインリサーチャー、環境エネルギーの特別研究員、サウンドデザイナーなど、さまざまなバックグラウンドをもつメンバーが参加しています(3期合わせて10名)。毎週1回の編集会議でアイデアを出し合い、編集長の山下正太郎、コンテンツ・ディレクターの若林恵(黒鳥社)ら編集部員とのディスカッションを重ねながら、ニュースレターやプリント版の記事を130本以上制作してきました。
現在、WORKSIGHTでは第4期となる2025年度の外部編集員を募集しています。実際どのように編集会議が行われているか、その雰囲気を体感できる機会として、3月3日(月)に「WORKSIGHT公開編集会議」第5回を開催いたします。
以下の募集要項に続いて、2024年度の外部編集員のメンバーが担当した記事もご紹介しています。WORKSIGHTの記事で取り上げているトピックや内容に関心がある方は、ぜひお気軽に応募ください。
当メディアのビジョンである「自律協働社会」を考える上で、重要な指針となりうるテーマやキーワードについて、ニュースレターなどさまざまなコンテンツを通じて一緒に探究してみませんか?
第4期外部編集員募集中
外部編集員の参加形態は、1年を通じて活動していただく「通年参加」と、ご都合にあわせて編集会議に参加いただき、ニュースレターの企画案を提案する「スポット参加」の2種類ございます。下記概要をご確認の上、奮ってご応募ください。
募集人数:若干名
活動内容:企画立案、取材、記事執筆、オンライン編集会議(毎週月曜夜)への参加など
活動期間:2025年4月〜2026年3月(予定)
募集締切:3月5日(水)正午
応募方法:下記よりご応募ください。
誰でも参加OK!「公開編集会議」第5回開催決定
WORKSIGHTの編集会議の模様を間近で体験できる機会として、誰でもご参加いただける公開編集会議を開催いたします。「自律協働社会」の実現に向けたヒントとなるテーマやキーワードとは何か。お申し込みいただいたみなさんにもアイデアをもち寄っていただき、編集部も交えてディスカッションします。「外部編集員」やWORKSIGHTの活動に少しでも共感してくださる方は、この機会にぜひご参加ください!
日時:3月3日(月)18:30〜20:30
会場:TIGER MOUNTAIN(東京・虎ノ門)
参加費:無料
定員:10名
ファシリテーター:山下正太郎(WORKSIGHT編集長)、若林恵(同コンテンツ・ディレクター)、宮田文久(同シニア・エディター)
担当記事はさまざま! 外部編集員が手がけた記事を厳選紹介
これまでに、デザインリサーチャー、環境エネルギーの特別研究員、ゲームサウンドクリエイターなど、多様なバックグラウンドをもつメンバーが集まったWORKSIGHT外部編集員。各メンバーの関心領域も「石」「保育」「ゲーム」「プログラミング言語」「ぬいぐるみ」など多岐にわたります。ここでは、第3期外部編集員が携わった記事を、コメントとあわせてご紹介します。
①秋山亮太さん
企画の精度は経験とともに上がると思っていましたが、最後まで難しさを実感しました。WORKSIGHTの企画には正解がなく、議論は広がり続けます。しかし、何気ない一言をきっかけに、驚くほどの速さで企画がかたちになることもあります。情報への感度が高まり、考え抜く力が鍛えられました。また、編集会議という定期的なアウトプットの場があることで、対象について粘り強く考え続ける習慣が身についたように思います!
【担当記事】
創造させるコード:ダニエル・テムキンにucnvが聞く、奇妙な難解プログラミング言語の世界
普段は広告プロデューサーとして活動する秋山亮太さんがもち込んだ本企画。意図的に読解が難しく設計されたユニークなプログラミング言語があり、その魅力をめぐって、エソラング制作者でアーティストのダニエル・テムキン氏と、日本のプログラマー兼アーティストのucnv氏による対談が実現。コードとアートが交差する奇妙な世界を通じて、人間とコンピュータの新たな創造性に迫りました。
②岡島真琴さん
毎週の編集会議は、メガネをつくるときの視力検査のように、編集部員がもち寄ったさまざまなレンズを組み合わせながら、クリアに見えそう(で見えないよう)なポイントを探っていく時間でした。「村のお母さん×金融」「TikTok×民俗学」「鳥×不動産」など、一見まったく関係ないと思われるふたつの物事が重なって焦点が合ったところから、自分にとって新しい世界が立ち現れる。そうして記事が生まれていくプロセスは、とても刺激的です!
【担当記事】
「保育」がコミュニティ運動になるとき:ベストセラー『育児の百科』著者が示唆した「社会を編み直す力」
約160万部を売り上げた小児科医・松田道雄のベストセラー『育児の百科』を、出産を機に読み始めた岡島真琴さん。現代における保育をめぐる問題と、松田の思想の重要性について、松田および保育の研究に長年取り組んできた立教大学教授・和田悠さんに取材しました。本記事は後に、プリント版26号「こどもたち Close Encounters with Kids」にも掲載されることとなります。
③倉持啓伍さん
企画をかたちにする難しさを実感しつつ、試行錯誤を重ねる楽しさもありました。異業種の方々が集まり、異なる視点が交わる編集会議は刺激的で、新たな発見の連続でした。公開編集会議では読者の意見を直接聞ける貴重な機会も。企画づくりは簡単ではありませんが、その過程には多くの学びがあります。調査や分析の視点を広げたい方、物事を多角的に考える力を養いたい方にとって、挑戦する価値のある経験です。ぜひご参加ください。
【担当記事】
ゲームにつながると、世界につながる:AbleGamers、アクセシビリティをめぐる20年間の試行
サウンドデザイナーとしてゲーム会社に勤める倉持啓伍さんは、ゲームにおける「アクセシビリティ」についての記事を担当。人気作『The Last of Us Part II』の対応から非営利団体「AbleGamers」の貢献まで、アクセシビリティをめぐる20年の進展を振り返りながら、デジタル社会のデザインの可能性をゲーム業界から探りました。