詩のことばに宿るもの:WORKSIGHTプリント版・21号「詩のことば Words of Poetry」明日10月20日発行!【特別ニュースレター】
いよいよ明日発行となる『WORKSIGHT[ワークサイト]21号 詩のことば Words of Poetry』。同じ言葉であっても、詩のなかにあるそれは普段と異なる強度と彩度をもって、新たな世界をわたしたちの前に差し出す。そこに宿る力とは何なのか。プリント版最新号では「詩のことば」を特集テーマに、詩が映し出す世界と言葉の不思議を再発見する。
Photograghs by Hiroyuki Takenouchi
週刊のニュースレターを中心に、自律協働社会のゆくえを探ってきたWORKSIGHT。明日10月20日にプリント版『WORKSIGHT[ワークサイト]21号 詩のことば Words of Poetry』を発行いたします。
言葉という情報伝達手段でありながら、普段わたしたちが使うそれとは異なるかたちで世界の様相を浮かび上がらせる「詩のことば」。情報過多社会のなかで、文化さえも消費の対象とされるいま、詩を読むこと、詩を書くこと、そして詩のなかの言葉にこそ宿るものとはいったい何なのでしょうか。
本特集の巻頭を飾るのは、韓国現代詩シーンの第一人者であり、セウォル号事件の犠牲者に寄りそってきたチン・ウニョン氏へのインタビュー。創作を通じて悲しみや苦痛の扱い方を学ぶ「文学カウンセリング」など、言葉を介した終わりのない思索と実践を重ねる彼女に、詩と社会の関係性について尋ねました。また、ソウルで詩集専門書店「wit n cynical」を営む詩人ユ・ヒギョン氏、韓国人と詩の関係を見つめてきたグラフィックデザイナー原田里美氏へのインタビューも掲載。詩が息づく韓国のいまをお伝えします。
そのほか、映画監督・佐々木美佳氏が綴る詩聖タゴールが愛したベンガルでの滞在記、詩人・大崎清夏氏によるハンセン病療養所の詩人たちをめぐる随筆と新作詩、民俗学者・畑中章宏氏が石垣りんと吉岡実から読み解く生活詩、建築家であり詩人の浅野言朗氏が語る詩集のデザイン、ウィトゲンシュタインの言語論から詩や言葉の理解を説く哲学者・古田徹也氏との対話などを収録しています。
わたしたちの世界を一変させる可能性を秘めた「詩のことば」について、詩作を生業とする詩人をはじめ、民俗学者、建築家、哲学者などのさまざまな視点から迫ったWORKSIGHTプリント版の最新号。ぜひお手にとってご覧ください。
目次に沿って、本号の内容をご紹介いたします。
◉巻頭言
詩を失った世界に希望はやってこない
文=山下正太郎(WORKSIGHT編集長)
忙しない現代社会において、詩を読み書きすることから遠のいているとすれば、わたしたちは何を見落としてしまっているのか。意志、美、生活などをキーワードに、詩が浮かび上がらせる世界について本誌編集長が思案し、いま「詩のことば」を取り戻す意義を再発見する。
◉花も星も、沈みゆく船も、人ひとりの苦痛も
韓国詩壇の第一人者、チン・ウニョンが語る「詩の力」
セウォル号事件の犠牲者の声を表象した詩「あの日以後」を収めた詩集が韓国でベストセラーとなったチン・ウニョン氏。大学にて10年間「文学カウンセリング」を教えながら、詩と社会の関係性をめぐって終わりなき思索と実践を重ねている。傷ついた人びとに、詩は何ができるのか。
◉ソウル、詩の生態系の現場より
ユ・ヒギョンによる韓国現代詩ガイド
詩を読む人、自ら書く人が多い韓国。歴史的な厚みを伴う文壇とその権威への反作用のもと、人気作家の詩集が3〜4万部売れるほど人びとに読まれているという。ソウルで詩集専門書店「wit n cynical」を営み、詩作のワークショップも行う詩人のユ・ヒギョン氏に、現代詩を取り巻く状況を訊いた(2023年4月11日配信のニュースレターより転載)。
◉そこがことばの国だから
韓国カルチャーはなぜ詩が好きなのか
語り手=原田里美
人気ドラマや音楽など、世界を席巻する韓国のコンテンツには「詩」がよく登場する。なぜ、韓国では詩が盛んなのだろうか。現地に留学し、文学を学んだ経験をもつグラフィックデザイナーの原田里美氏が見聞きした韓国の歴史、街の書店や公共空間、社会情勢からその理由を解き明かす。
◉ベンガルに降る雨、土地の歌
佐々木美佳 詩聖タゴールをめぐるスケッチ
過酷な天候も、詩のかたちで言祝いだラビンドラナート・タゴール。1913年のノーベル文学賞受賞で世界的に知られ、その歌は100年以上経ったいまもベンガルの地で愛されている。映画『タゴール・ソングス』を制作し、2022年末から現地に留学している映画監督・文筆家の佐々木美佳氏が、土地に息づく詩情について酷暑と雨季を経験するなかで思い巡らしたことを、撮影した現地の風景とともに綴る。
◉「言葉」という言葉も
大崎清夏 詩と随筆
ハンセン病療養所の人びとによる初の合同詩集『いのちの芽』刊行から70年目を迎えた2023年、国立ハンセン病資料館で催された展示を訪れた、詩人の大崎清夏氏。療養所の詩人たちが遺した詩作と思いに触れたエッセイ「その最初の句点だけは、末尾ではない場所に」に加え、「青い鳥たち」ほか、展示を踏まえた新作詩二篇を掲載する(エッセイは2023年4月18日配信のニュースレターより転載)。
◉ふたつの生活詩
石垣りんと吉岡実のことば
文=畑中章宏
一歳違いでともに勤め人でもあった、戦後日本を代表するふたりの詩人、石垣りんと吉岡実。作風は著しく異なるものの、それぞれの回路で日常と言葉を結びつけ、ともに「生活派の詩人」と目されている。民俗学者・畑中章宏氏が、真壁仁の『詩の中にめざめる日本』と吉本隆明の『戦後詩史論』を参照しつつ、"生活をまとう詩"とその思想を読み解く。
◉紙の詩学
建築家・詩人、浅野言朗から見た詩集
詩集のページを開くと、広大な余白なしには、詩のことば自体が成立しないことに気づく。詩を書くとき、すでにデザインが駆動しているのだと、建築家・詩人の浅野言朗は語る。浅野の選書した詩集と自著をひもときながら、それぞれの詩集の小宇宙を一緒に覗いてみた。
◉詩人は翻訳する・編集する・読解する
ことばと世界を探究する77冊
詩人の真価は、詩作するときにだけ発揮されるのではない。他言語の作品を翻訳し、世界に散らばることばを編集し、すでに書かれた/同時代的に書かれることばを読解する。そのセンスに、わたしたちの心身は深く刺激されるのだ。広義の詩的表現ととらえうる書物やその筆者も含め、幅広い選書でお届けする異色の入門ブックガイド。
◉しっくりくることばを探して
古田徹也との対話・ウィトゲンシュタインと詩の理解
わたしたちの日常言語には"固有の魂"が宿っている──。「言葉を理解する」ことを哲学し、意味の伝達にとどまらない言葉の側面を探求した天才哲学者、ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン。その言語論を研究する哲学者・古田徹也氏との対話を通して、「詩がわかる」の正体を解き明かす。
【書籍詳細】
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]21号 詩のことば Words of Poetry』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0928-6
アートディレクション:藤田裕美
発行日:2023年10月20日(金)
発行:コクヨ
発売:学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税