はばたく本棚:鳥から世界を知る60冊(WORKSIGHTプリント版・24号「鳥類学 Ornithology」より)
年に4回プリント版を発行しているWORKSIGHT。年末の特別ニュースレターとして、各号の特集テーマに合わせて選書したブックリストをプリント版より転載して4日連続でお届けいたします。第3弾となる本日は、プリント版24号「鳥類学」に掲載した60冊をご紹介。
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4日連続でお届けする年末特別ニュースレターでは、これまでに発行したプリント版より、各号の特集テーマに合わせてWORKSIGHTが選書したブックリストをお届けします。
第3弾は、2024年8月6日刊行の『WORKSIGHT[ワークサイト]24号 鳥類学 Ornithology』より、「はばたく本棚」に掲載した書籍をご紹介。「観察する」「科学する」「哲学する」「文学する」「描く」「調理する」の6つのテーマにそって計60冊の本をセレクト。鳥の世界を仰ぎ見るためのブックリストをお届けします。
はばたく本棚
鳥から世界を知る60冊
わたしたちの頭上を行き交い、あたりを睥睨し、ときに空を覆い尽くす鳥たちは、きっと人類以上に世界のことを知っている。鳥にまつわる書籍を読むことは、その視座にいくらかでも近づこうとする所作に他ならない。全60冊、翼なき人間のためのブックガイド。
Compiled by WORKSIGHT
観察する
鳥のことを知りたいならば、自分の周囲へと意識を広げてみることから。感知するための術を伝える本を手に、五感を研ぎ澄ませてみれば、あなたの身の回りに鳥たちが遍く存在していることに気づくはずだ。
(左から)1.『電柱鳥類学:スズメはどこに止まってる?』、3.『鳥を読む:文化鳥類学のススメ』、8.『野生のオーケストラが聴こえる:サウンドスケープ生態学と音楽の起源』、10.『時間軸で探る日本の鳥:復元生態学の礎』
1.『電柱鳥類学:スズメはどこに止まってる?』三上修・著(岩波科学ライブラリー)
2.『伝書鳩:もうひとつのIT』黒岩比佐子・著(文春新書)
3.『鳥を読む:文化鳥類学のススメ』細川博昭・著(春秋社)
4.『都会の鳥の生態学:カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』唐沢孝一・著(中公新書)
5.『渡りの足跡』梨木香歩・著(新潮文庫)
6.『鳥学の100年:鳥に魅せられた人々』井田徹治・著/日本鳥学会、山階鳥類研究所・協力(平凡社)
7.『カラスの教科書』松原始・著(講談社文庫)
8.『野生のオーケストラが聴こえる:サウンドスケープ生態学と音楽の起源』バーニー・クラウス・著/伊達淳・訳(みすず書房)
9.『鳥たちをめぐる冒険』W.H.ハドスン・著/黒田晶子・訳(講談社学術文庫)
10.『時間軸で探る日本の鳥:復元生態学の礎』黒沢令子、江田真毅・編著(築地書館)
科学する
鳥をめぐる知見はアマチュアリズムに支えられてきた。だからこそ、専門家の精緻な検討もまた大きな意味をもつ。最先端のデジタル機器による解析に、歴史に裏付けられた人文知……科学の視点が鳥と共にある明日を照らす。
(左から)11.『アレックスと私』、13.『鳥学大全:東京大学創立百三十周年記念特別展示「鳥のビオソフィア-山階コレクションへの誘い」展』、16.『人類を熱狂させた鳥たち:食欲・収集欲・探究欲の1万2000年』、18.『鳥のお医者さんのためになるつぶやき集』
11.『アレックスと私』アイリーン・M・ペパーバーグ・著/佐柳信男・訳(ハヤカワ文庫NF)
12.『鷹狩りの書:鳥の本性と猛禽の馴らし』神聖ローマ皇帝 フリードリッヒ二世・著/吉越英之・訳(文一総合出版)
13.『鳥学大全:東京大学創立百三十周年記念特別展示「鳥のビオソフィア-山階コレクションへの誘い」展』秋篠宮文仁、西野嘉章・編(東京大学出版会)
14.『鳥類学』フランク・B.ギル・著/山岸哲・日本版監修/山階鳥類研究所・訳(新樹社)
15.『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』渡辺佑基・著(河出ブックス)
16.『人類を熱狂させた鳥たち:食欲・収集欲・探究欲の1万2000年』ティム・バークヘッド・著/黒沢令子・訳(築地書館)
17.『動物たちは何をしゃべっているのか?』山極寿一、鈴木俊貴・著(集英社)
18.『鳥のお医者さんのためになるつぶやき集』海老沢和荘・著(グラフィック社)
19.『〈新装版〉世界大博物図鑑 鳥類シリーズ』荒俣宏・著(平凡社)
20.『デジタル時代の恐竜学』河部壮一郎・著(集英社インターナショナル新書)
哲学する
鳥は身近な存在として、人間たちの思考や生を刺激し、多くのテクストと実践の源泉となってきた。ときに神話的なビジョンを託し、ときに種の絶滅へと思いを馳せ、黙考する人類の目の前を、颯爽と鳥たちが通り過ぎていく。
(左から)22.『ピリカ チカッポ(美しい鳥):知里幸恵と『アイヌ神謡集』』、24.『鷹と生きる:鷹使い・松原英俊の半生』、26.『絶滅へむかう鳥たち:絡まり合う生命と喪失の物語』、29.『The Phoenix Complex: A Philosophy of Nature』
21.『空と夢:運動の想像力にかんする試論〈新装版〉』ガストン・バシュラール・著/宇佐見英治・訳(法政大学出版局)
22.『ピリカ チカッポ(美しい鳥):知里幸恵と『アイヌ神謡集』』石村博子・著(岩波書店)
23.『カワセミ都市トーキョー:「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』柳瀬博一・著(平凡社新書)
24.『鷹と生きる:鷹使い・松原英俊の半生』谷山宏典・著(山と渓谷社)
25.『世界一の珍しい鳥:破格の人〈ハチスカ・マサウジ〉博物随想集』蜂須賀正氏・著/杉山淳・編(原書房)
26.『絶滅へむかう鳥たち:絡まり合う生命と喪失の物語』トム・ヴァン・ドゥーレン・著/西尾義人・訳(青土社)
27.『野草雑記・野鳥雑記』柳田国男・著(岩波文庫)
28.『ドードーをめぐる堂々めぐり:正保四年に消えた絶滅鳥を追って』川端裕人・著(岩波書店)
29.『The Phoenix Complex: A Philosophy of Nature』Michael Marder・著(MIT Press)
30.『鳥の歌、テクストの森』髙山花子・著(春秋社)
文学する
小説家も詩人も、日々傍らにいるのに明確に異なる存在である鳥から、多くのインスピレーションを受け取ってきた。世界中から届けられる、鳥が登場する文学作品たち。ページを開けば、どこからか鳴き声が聞こえてくる。
(左から)31. 『ペンギンの憂鬱』、33.『鳥たちのフランス文学』、36.『無限角形:1001の砂漠の断章』、40.『鳥はいまどこを飛ぶか:山野浩一傑作選Ⅰ』
31. 『ペンギンの憂鬱』アンドレイ・クルコフ・著/沼野恭子・訳(新潮クレスト・ブックス)
32.『洪水はわが魂に及び(上・下)』大江健三郎・著(新潮文庫)
33.『鳥たちのフランス文学』岡部杏子、福田桃子・編著(幻戯書房)
34.『アメリカの鳥たち』ローリー・ムーア・著/岩本正恵・訳(新潮社)
35.『アルマ』ル・クレジオ・著/中地義和・訳(作品社)
36.『無限角形:1001の砂漠の断章』コラム・マッキャン・著/栩木玲子・訳(早川書房)
37.『無情の世界 ニッポニアニッポン:阿部和重初期代表作2』阿部和重・著(講談社文庫)
38.『博物誌』ジュール・ルナール・著/岸田国士・訳(新潮文庫)
39.『プレヴェール詩集』ジャック・プレヴェール・著/小笠原豊樹・訳(岩波文庫)
40.『鳥はいまどこを飛ぶか:山野浩一傑作選Ⅰ』山野浩一・著(創元SF文庫)
描く
太古の時代から人は鳥の色彩やフォルムに魅せられてきた。気づけば新たなビジュアル表現へと手を動かし始めることもしばしばだ。絵画に漫画、イラスト、果ては骨格図や復元図まで、描かれた鳥のオンパレード。
(左から)41.『オーデュボンの鳥:『アメリカの鳥類』セレクション』、43.『グレゴリー・ポール翼竜事典』、47.『My Picture Book 世界の鳥』、49.『鳥ジャンキーズ(シリーズ)』
41.『オーデュボンの鳥:『アメリカの鳥類』セレクション』ジョン・ジェームズ・オーデュボン・著(新評論)
42.『日の鳥(シリーズ)』こうの史代・著(日本文芸社)
43.『グレゴリー・ポール翼竜事典』グレゴリー・ポール・著/東洋一、今井拓哉・監訳/河部壮一郎、柴田正輝、服部創紀・訳(共立出版)
44.『とりぱん(シリーズ)』とりのなん子・著(講談社)
45.『鳥人大系(1・2)』手塚治虫・著(手塚プロダクション、電子書籍)
46.『おやすみプンプン(シリーズ)』浅野いにお・著(小学館)
47.『My Picture Book 世界の鳥』マット・メリット・著(青幻舎)
48.『無能の人・日の戯れ』つげ義春・著(新潮文庫)
49.『鳥ジャンキーズ(シリーズ)』空廼カイリ・著(マッグガーデン)
50.『鳥の描き方マスターブック:骨格を理解していきいきとした姿を描く』ジョン・ミューア・ローズ・著/森屋利夫・訳(マール社)
調理する
鳥を知るには舌と腹から……といえば愛好家は眉をひそめるかもしれないが、鳥の本を読むうち腹も減る。人間の生をつないできた食料としての鳥に向き合い、その味わいや食感を堪能することから深まる思考がある。
(左から)51.『鷹将軍と鶴の味噌汁:江戸の鳥の美食学』、54.『鳥肉以上、鳥学未満。:Human Chicken Interface』、56.『「食」の図書館 タマゴの歴史』、59.『대한민국 치킨전(大韓民国チキン事情)』
51.『鷹将軍と鶴の味噌汁:江戸の鳥の美食学』菅豊・著(講談社選書メチエ)
52.『ジビエレシピ:プロのためのジビエ料理と狩猟鳥獣』ブルーノ・ドゥーセ・著/ルイ・ローラン・グランダダム・撮影/小宮輝之、山口杉朗・監修/柴田里芽・訳(グラフィック社)
53.『アーバンサバイバル入門』服部文祥・著(deco)
54.『鳥肉以上、鳥学未満。:Human Chicken Interface』川上和人・著(岩波現代文庫)
55.『ニワトリ:愛を独り占めにした鳥』遠藤秀紀・著(光文社新書)
56.『「食」の図書館 タマゴの歴史』ダイアン・トゥープス・著/村上彩・訳(原書房)
57.『やきとりと日本人:屋台から星付きまで』土田美登世・著(光文社新書)
58.『焼鳥の戦前史〈第二版〉』近代食文化研究会・著(近代食文化研究会、電子書籍)
59.『대한민국 치킨전(大韓民国チキン事情)』정은정(チョン・ウンジョン)・著(따비〔タビ〕)
60.『鶏料理大全』松本浩之、中井雅明、小池教之、秋山能久、和田利弘、小林武志、成毛幸雄、李南河、ナルナート・スクサワング・著(ナツメ社)
photograph by Hironori Kim
書籍『WORKSIGHT[ワークサイト]24号 鳥類学 Ornithology』
古来より神話、芸術、科学など多くのシーンで重要視され、学者や芸術家のみならず、市井の人びとにも愛されてきた鳥。長い歴史のなかで鳥は何を象徴し、現代を生きるわたしたちがその学問に触れることは何を意味するのか。民俗学、美術史、環境史などのアカデミックな視点や、音楽家、獣医、登山家、調香師、ゲームクリエイターなどの多種多様な立場から、自然との共生や、鳥を通じて再発見される人間社会の姿をとらえる。
◉The Pillar
スティーブン・ギル 鳥の恩寵
◉巻頭言・さえずり機械
文=山下正太郎(WORKSIGHT編集長)
◉野鳥雑記のこと
柳田國男と鳥の民俗学
語り手=島村恭則
◉五感の鳥類学
見る:ステファニー・ベイルキー(全米オーデュボン協会)
聴く:コスモ・シェルドレイク(ミュージシャン)
触る:海老沢和荘(横浜小鳥の病院)
嗅ぐ:浅田美希(「インコ香水」調香師)
味わう:服部文祥(サバイバル登山家)
◉都会と巣箱
鳥専門の不動産屋「BIRD ESTATE」の歩み
◉この営巣配信がすごい!
世界のYouTubeチャンネルが伝えるドラマ
◉始原の鳥
世界の始まりと鳥の象徴学
監修・解説=西野嘉章
◉はばたく本棚
鳥から世界を知る60冊
◉旅行鳩よ、ふたたび
環境史家ドリー・ヨルゲンセンの問い
◉水・鳥・人
中村勇吾の群体論
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]24号 鳥類学 Ornithology』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0931-6
アートディレクション:藤田裕美(FUJITA LLC.)
発行日:2024年8月9日(金)
発行:コクヨ株式会社
発売:株式会社学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税