わたしは消費者なのか:WORKSIGHTプリント版・27号「消費者とは Are We Consumers?」5月14日刊行【特別ニュースレター】
いよいよ発売を迎えたWORKSIGHTプリント版・27号「消費者とは Are We Consumers?」。わたしたちはみな消費者であるはずなのに、自分自身を「消費者」と呼ぶことにしっくりきている人は少ない。果たして、わたしたちは本当に消費者なのだろうか。市場調査・マーケティングリサーチの老舗・インテージと共同編集した、消費の現在地に迫る最新号。
Photographs by Hironori Kim
Cover Illustration by WOWs
週刊のニュースレターを中心に、自律協働社会のゆくえを探ってきたWORKSIGHTは、5月14日(水)にプリント版最新号『WORKSIGHT[ワークサイト]27号 消費者とは Are We Consumers?』を刊行した。
消費者という存在は、歴史のなかでいかに形づくられ、現代においてどのような意味合いを帯びているのか。今号では、マーケティングリサーチ分野においてアジア全域で確固たる実績をもつ老舗企業・インテージからゲスト・エディターを迎え、消費の現在地を見つめ直す。
『消費者と日本経済の歴史』著者・満薗勇による「消費者・生活者・お客様」ということばの変遷をたどる考察をはじめ、20世紀前半の社会学者・ラザースフェルドを起点にした社会調査の歴史の再考、エンタメ社会学者・中山淳雄によるクリエイターエコノミーとファンダムの分析、パルコと山口はるみの広告から見る消費文化、「町の診断師」として京都の商店街を記録した北沢恒彦の実践など、多彩な読みものを収録。消費者とクリエイターの境界が揺らぎ、〈買う人〉から〈参加する人〉へと消費者の姿が変わり始めたいま、時代とともに移ろう「消費」のあり方と向き合う。
【目次紹介】
◉巻頭座談会 消費者がわからない
対談:野田淳(インテージ)× 山下正太郎(本誌編集長)
企業がつくった商品を、消費者が購入する。長らく自明のこととなっていた商売の仕組みが近年どんどんと複雑になっている。企業は消費者との関係性をどう結び直すか試行錯誤を続けている。120年の歴史をもつメーカー、コクヨでその真っ只中にいる本誌編集長・山下正太郎と、さまざまな企業を市場調査を通してサポートするインテージ・野田淳が、なぜいまわたしたちが消費者を見失っているのかを話し合った。
Interview by Kei Wakabayashi and Sho Kobayashi
Text by Kazuaki Asato
◉消費者とは誰か
満薗勇とたどる「消費者・生活者・お客様」の変遷
戦後の日本で、消費者という概念は時代とともに大きく変化してきた。2024年に刊行された『消費者と日本経済の歴史:高度成長から社会運動、推し活ブームまで』 (中公新書)でその変化を概観した注目の歴史学者である満薗勇に取材した。時代や産業、ジェンダーなど、さまざまな状況と結びつきうつろう消費者の歴史と、これからの消費者像を議論する。
Interview by WORKSIGHT + INTAGE
Text by Sho Kobayashi
Illustration by WOWs
◉調査という罠
ラザースフェルドが社会調査に残した問い
消費者の姿を捉えようとするとき、当たり前のように用いられるアンケートやインタビューなどの調査。しかし、そもそも誰に対して何をすると調査をしたことになるのだろうか。現代の調査の根源を考えるヒントが社会学者・ラザースフェルドにある、と北田暁大は言う。そもそも調査とは何なのか。調査会社インテージの野田淳とともに迫った。
Interview by WORKSIGHT + INTAGE
Text by Eishi Homma
Illustration by WOWs
◉あなたは消費者?
インテージ × WORKSIGHTによる大規模アンケート調査
消費とは、わたしたちにとって最も身近で日常的な経済・社会への参加方法である。 「消費をする人」という意味であれば、わたしたちはみな消費者である。しかしながら、自分のことを消費者と考える人がどの程度いるのだろうか。ならばわたしたちは、自分を 「どんな存在」 と規定して、どんなあり方を理想としているのだろうか。本特集のためにインテージが行った特別調査から、わたしたち自身と、それを取り巻く生活のあり方を明らかにする。
アンケート調査を終えて「自己像、その理想と現実」
消費者ということばを起点に、現在のわたしたちが何者として生活し、どのような暮らしを理想とするのかを追った本調査。調査結果から浮かび上がる、わたしたちの姿とは。インテージの野田淳が解説する。
Research by Intage
Text by Atsushi Noda (Intage)
Illustration by WOWs
◉消費者がクリエイターになる
クリエイターエコノミー/ファンダム、参加する消費者の時代
エンターテインメントの世界で、クリエイターと消費者の境界が揺らいでいる。コンテンツに参加し、そのコンテンツのなかで新たなコンテンツを生み出す〈参加する消費者〉の経済圏=クリエイターエコノミーが拡大し、大きな注目を集めている。消費者とクリエイターの間を往復する次世代の消費者について、エンタメ社会学者の中山淳雄が分析した。
Interview by Kohei Hara and WORKSIGHT + INTAGE
Text by Kohei Hara
Illustration by WOWs
◉レコードを万引きする
若者はいつから「消費者」なのか
ソーシャルメディア上で炎上した、レコードの万引きに関するある投稿は、 「若者」 と 「消費」をめぐる根源的な問いへと誘うものでもあった。お金がないのに、消費者としてターゲットされる若者。その矛盾を社会はどう受け止めてこなかったのか。
Text by Kei Wakabayashi
Illustration by WOWs
◉パルコと山口はるみの時代
消費文化の到来を告げたHarumi Gals
高度経済成長を経て大衆消費社会へと移行する1970~80年代、パルコの挑発的なメッセージと、山口はるみのイラストが描く開放的な女性像が結びついた広告イメージは、消費者の価値観に革新をもたらした。パルコの広告アーカイブを中心とした山口はるみの仕事から、日本の消費者像の転換点を振り返る。
Harumi Galsというオキシモロン
パルコと山口はるみがタッグを組み鮮烈な広告ビジュアルを生み出した1970年代から1980年代、どこからか聞かれるようになった「消費文化」ということば。消費することが文化をつくり上げることだった時代とは、どんなものだったのだろうか。20世紀の日本の出版文化を発信する古本屋TIGER MOUNTAIN店主の若林恵が、山口はるみの手がけた書籍たちとともに、彼女が描いた時代の姿を振り返る。
Illustration by ©Harumi Yamaguchi Courtesy of PARCO Co., Ltd.
Text by Kei Wakabayashi
◉まちの診断術
北沢恒彦と住民が「テクった」京都の商店街
京都市役所に務める傍ら、 「町の診断師」を自称し、写真家や詩人、住民を巻き込んで商店街に繰り出した北沢恒彦。独自のアプローチで日々の営みが繰り広げられるまちを観察し、その記憶や息遣いまで記した「診断記録」は、現在の我々の都市生活にも刺激を与えてくれる。
Interview & Text by Shotaro Yamashita
Photographs by Fusayoshi Kai, Naohiro Kurashina
◉コンシューマーズ・ライブラリー
消費する我々の痕跡をたどる
20世紀以後、消費はわたしたちの生活を覆い尽くした。大量生産される商品、あふれかえる広告……。日々の消費が社会にどんな意味をもたらすのか、わたしたちはほとんど見失っている。それでも、時代の移り変わりとともに消費のあり方が変動しているのは間違いない。先人たちが著した25冊の書籍からたどる、やがて悲しき消費者のゆくえ。
Selection by Fumihisa Miyata(WORKSIGHT)
Illustration by WOWs
◉世代、あるいは生産と消費が分離した世界のゆくえ
ティム・インゴルドは語る
人類学の泰斗ティム・インゴルドは、著書『世代とは何か』で、世代を断絶した存在として捉える従来の見方に疑問を呈し、複数の世代が縄のように織り合わさるイメージを提案している。 生命の連続性のなかに「わたし」を位置づけ直すことで、先祖と子孫が交錯する新たな関係性が見えてくる──ジェンダー、アイデンティティ、科学技術、未来との向き合い方など、世代をめぐるユニークかつ難解な思考実験の真意を、著者本人に訊ねた。
Interview by Ryota Akiyama and Kei Wakabayashi
Text by Kei Wakabayashi
Illustration by WOWs
Photographs by Yuki Ohashi
【書籍詳細】
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]27号 消費者とは Are We Consumers?』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0934-7
アートディレクション:藤田裕美(FUJITA LLC)
発行日:2025年5月14日(水)
発行:コクヨ株式会社
発売:株式会社学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税