World is a Game:わたしたちの世界の手引書としてのゲーム
ゲームの世界市場規模は26兆円を突破し、総ゲーム人口は30億人ともいわれる現代。わたしたちのあり方を規定するメディアといっても過言ではないゲームを、さまざまな角度から見つめてみたら、世界が見えてきた。本記事は、未知なるダイナミズムに数々の動画コンテンツで触れていく、魅惑のゲーム曼荼羅だ。
Photo by Hironori Kim
現在発売中の『WORKSIGHT[ワークサイト]22号 ゲームは世界 A–Z World is a Game』。AからZまで計26個の関連ワードを切り口に、多様に拡張しつつ進化/深化するゲームから世界を見つめる特集です。
今回は、本誌をよりいっそう楽しむためのディープガイドをお届け。各企画の見どころ、さらには誌面に収まりきらなかった未掲載情報も。最新号とともにぜひご覧ください。
text by WORKSIGHT
【A】Architects:マイクラのなかの建築家、というお仕事
巻頭を飾る「A」は“建築家”を意味する「Architects」。世界で最も売れているインディーゲーム「Minecraft」(マインクラフト)のプロ建築集団にフォーカス。BlockWorks、VARUNAといったデザインスタジオの活動からマイクラ建築のいまに迫ります。
BlockWorksは、イギリス・ガーディアン紙の持続可能な未来都市のビジョン構築、2020年ドバイ国際博覧会での万博会場の再現などに携わってきた世界的なデザインスタジオ。同年には「国境なき記者団」の依頼で制作された仮想図書館「The Uncensored Library」(検閲のない図書館)でも話題になりました。
VARUNAは、Amazon Musicとのパートナーシップのもと行われたマイクラ内の音楽フェス「Mellow Moon Minecraft Festival」の空間を制作。同イベントは2022年、Alfie Templemanのデビューアルバム『Mellow Moon』の発売にあわせて、作品の世界観をマイクラ内で築いたもの。また、ANYCOLORが運営するVTuberプロジェクト「NIJISANJI EN」所属のライバーによるゲームイベント「NIJIENPrismCup2023」のマップ制作も担当。イベントの模様は参加したVTuberのチャンネルからご覧いただけます。
こちらは本誌にも掲載されている巨大な砂漠都市「ZUBUK」のタイムラプス動画。VARUNAのYouTubeチャンネルではタイムラプス動画のほか、マップ内を紹介動画や建築方法のチュートリアルなども公開されています。WORKSIGHT最新号の巻頭ビジュアルページではVARUNAによる圧巻の作品群を紹介しました。
【B】The Backrooms:巨大コンテンツとなった「不穏な部屋」
「B」は、2022年に世界的なブームとなり、WORKSIGHTのニュースレターでもとり上げた「The Backrooms」。
クリーピーパスタ(インターネット上でコピー・アンド・ペーストを通じて流布している都市伝説の一種)であり、ファンが主体となってコンテンツを加筆・編集する集団創作ホラーでもあるThe Backrooms。その始まりは2018年に巨大掲示板「4chan」に投稿された1枚の不穏な写真でした。
その画像は後に、A24による長編映画化も決定しているケイン・パーソンズのThe Backroomsシリーズ、Apple TV+の人気ドラマ「セヴェランス」、2023年の大ヒットホラーゲーム「8番出口」の世界観に影響を与えたことでも知られています。Steamでは現在「Escape the Backrooms」「Inside the Backrooms」といった関連ゲームが200本以上もリリースされており、東京ドームでリアルイベントを行うほどの人気を誇るゲーム実況者ユニット「TOP4」、NHKのゲーム教養番組「ゲームゲノム」シーズン2で副音声を担当する「2BRO.」もプレイしています。
所有者も登場するキャラもない、ただの“背景”なのに、ゲームクリエイター/ゲーム実況者など世界中の人びとを虜にする巨大コンテンツ。その来歴に迫るコラムをお届けします。
【C】Convergence:21世紀はゲームによって統合される
「C」は”融解”を意味する「Convergence」。ゲームはもはやエンターテインメントの枠にとどまらず、映像、音声、文字といったメディアがコンヴァージされ、それを扱うシステムとなりつつあるのではないか──その仮説をめぐり、WORKSIGHT編集長・山下正太郎とコンテンツディレクター・若林恵が対談。WORKSIGHTがいま“ゲーム”に関心を寄せ、特集号をつくる理由とは。現在特別公開中です。
【D】Digital Community:遊ぶはつくる。企業はコミュニティ
「D」はDigital Communityをフィーチャー。アメリカ発のゲームプラットフォーム「Roblox」は2020年7月、月間アクティブユーザーが1億5000万人を突破。その多くは13歳以下が占め、いまや「ゲーム版YouTube」との呼び声も。若者たちのデジタルコミュニティが形成されているプラットフォームといえます。
このような利用状況を踏まえ、数々の企業がRobloxに参入。Vans、Nike、Walmart、GAP、American Eagle、Claire’sなどがRobloxを活用したデジタル戦略に乗り出し、ゲームをつくり楽しむ子どもたちが集う世界最大級のメタバースへと進化しています。
その最中の2019年に設立された「Gamefam」は、デジタルエクスペリエンスを創出するメタバース/ゲーム開発のリーディングカンパニーとして注目を集めています。2022年にセガと共同制作した「Sonic Speed Simulator」の総アクセス数は、なんと8億7060万回超を記録。
WORKSIGHTでは、Gamefamの共同創業者/CEOのジョー・フェレンツにインタビュー。同社の成功の秘訣のひとつといえる「クリエイター主導」というビジョンを解き明かすと同時に、ゲームをめぐるクリエイターエコノミーやデジタルコミュニティに迫ります。
【E】 Eco-System:5万人の町がゲーム開発の聖地に
「E」は「Eco-System」。スウェーデンの町「シェブデ(Skövde)」はゲームをめぐるエコシステムを確立し、人口5万人の規模ながらゲーム開発の聖地として名を揚げました。
その始まりは2014年スタートのインキュベーションプログラム「Sweden Game Arena」。SGAから生まれた北欧神話サバイバルゲーム「Valheim」は1000万本を売り上げたほか、創設メンバーには爆発的な人気を誇るおバカゲーム「Goat Simulator」の開発者も。シェブデは知らずとも、この町から生まれたゲームを知っている人は多いのではないでしょうか。
充実したインキュベーションプログラム、ゲーム開発教育、スタートアップ支援。そこに集う開発者、学生、企業……。ゲーム開発にまつわる「すべてをカバーするエコシステムがある」というシェブデを紹介するテキストです。
【F】Field Research:ゲームさんぽ:ゲームという模擬社会を歩く
「F」は、人気実況シリーズ「ゲームさんぽ」の始祖・なむさんによる「Field Research」。
「ゲームさんぽ」はさまざまな分野の専門家をゲストに迎え、雑談しながらゲームの世界を散歩するスタイルのゲーム実況。過去には精神科医・名越康文さん、気象予報士・石原良純さん、家庭科の先生やギャルも登場。コラムではなむさんによる"専門家のパンチライン"5選も。
記事中では2017年公開の「3歳のこどもといく『Call of Duty』」に触れ、”共視"というゲームさんぽの基本原理も解説。ちなみに、同動画内でなむさんが推すパンチライン、「人はゆっくりゆっくり歩くんだ」を繰り出した専門家「3歳の人 クーちゃん」はなむさんの息子さんです。
ゲームというフィールドは「高度な模擬社会」であり「先進的なコミュニケーションテクノロジーの実験場」である──ゲームさんぽの手法や設計思想を明かす必読のコラムです。
【G】GPU:ゲームから始まった戦争
「G」は「GPU」。3DCGに必要な演算処理を行う画像処理半導体、GPU。“ゲーム進化のドライバー”ともいえるこの部品はいま、自動運転、ロボティクス、金融取引、創薬などさまざまな分野の技術革新において注目され、米中対立の焦点にもなっています。
GPUを広めたのは、「ゲームとマルチメディア市場に3Dグラフィックスをもたらすこと」をミッションに設立されたアメリカの企業「NVIDIA」(エヌビディア)。彼らはこの技術を画像・映像処理以外にも転用。そこで打ち出されたのが「GPGPU」、“GPUによる汎用計算”を意味する処理ユニットです。
特に生成AI(人工知能)においてその高い演算能力は必要不可欠とされ、AI半導体の市場規模が拡大の一途をたどるなか、NVIDIAの業績も急成長。2023年は半導体業界において、売上高で初めて世界首位になる可能性も囁かれているほどです。
そんななか、アメリカはNVIDIAなどのAI半導体の輸出規制を設けるなどの動きを見せ、米中対立の争点にも発展。GPUをめぐる「ゲームから始まった戦争」。その全貌をぜひ誌面でご覧ください。
Photo by Justin Sullivan/Getty Images
【H】University of Hertfordshire:ゲーム教育の最高峰で「リアルタイムスキル」を学ぶ
「H」は、ゲームデザインの教育機関として高い評価を得る「University of Hertfordshire」(ハートフォードシャー大学)。WORKSIGHTは彼らが教える「リアルタイムスキル」に注目。ゲームにとどまらず、自動車、航空、建築業界などでも重宝されているというそのスキルについて、同大学のBA & MA Games Art and Designコースでシニア講師を務めるニール・ギャラガー氏にインタビューしました。
マイクロソフト、任天堂、ソニーなどで数々のゲーム機/タイトルの制作に携わった経歴をもち、近年では初音ミクの「MIKU EXPO 2020 EUROPE」ロンドン公演、Red Bull Air Race ExperienceのVRプロジェクトにも携わったギャラガー氏。ゲーム分野では長らく「リアルタイムレンダリング」と呼ばれてきたリアルタイムスキルについて、その概要や用途、わたしたちの文化を変えていく可能性について語ります。
【I】itch.io:プラットフォームは「拠り所」になれるか
「I」は、インディゲームを中心としたコンテンツ配信プラットフォーム「itch.io」を解説。徹底した“クリエイターファースト”の姿勢を貫くitch.io。その根底には、巨大プラットフォーマーによる市場寡占問題への問いと抵抗があります。
PCゲーム業界における世界最大のプラットフォームといえば「Steam」。“ゲームづくりの民主化”の一端を担い、世界中のインディクリエイターにゲームを配信・販売する機会を与えた一方で、近年ではその規模や影響力が問題視されることも。実際、SteamのPCゲーム市場のシェア率は75%におよぶという報告もあり、Steamに限らず巨大プラットフォーマーはその優位性から独占販売ともとれる戦略を打ち立て、運用方針などについて独占禁止法違反の可能性を指摘されたケースも見られます。
ゲーム業界で長年大きな問題のひとつとなっている市場寡占問題をめぐって、itch.ioの創設者であり、自身もゲーム開発者だったリーフ・コーコラン氏は、プラットフォーマー中心のシステムを疑問視。その思いが、審査不要で誰でも気軽に作品をアップロードできる仕組みなどクリエイターファースト思想のプラットフォーム「itch.io」の誕生へとつながっていきました。
プラットフォームは果たして、多様なクリエイターの「拠り所」になることができるのか。注目のテキストをぜひご覧ください。
【J】Japanese Indie:講談社と集英社とインディゲームのあかるい未来
「J」は「Japanese Indie」をテーマに、ゲーム分野に本格参入した講談社・集英社にフォーカス。作家と二人三脚でコンテンツを生み出す“編集者”という存在。誰でもゲーム開発ができるようになったいま、その強みをゲーム分野でも活かし、新たな才能の発掘を目指しています。
講談社「クリエイターズラボ」は、同社がより幅広いジャンルのクリエイターと出逢うために2021年6月に生まれたR&D部署。「すべてはクリエイターのために」という指針のもと、創業時から受け継がれてきた精神と110余年で培った強みを活かし、多様なクリエイターを支援。同部署の1プロジェクト「ゲームクリエイターズラボ」はインディゲームクリエイターを支援しており、クリエイターに担当編集が付き年間最大1000万円の制作支援金を支給するプログラムも実施。その応募数はなんと3000件超。「違う冬のぼくら」など、作家性の光る作品が次々と生まれています。
2022年2月に設立された「集英社ゲームズ」は、ゲームクリエイターが交流し、新しい作品を生み出すためのプラットフォーム「ゲームクリエイターズCAMP」の運営のほか、クリエイターへの開発投資事業、国内外のゲーム企業との共同開発事業など、複数の事業を手がけています。2023年12月には「Game Pitch Base」無料β版の提供をスタート。開発者とパブリッシャーのマッチングを促進し、制作したい企画や開発中のゲームへの投資など、ゲーム開発をより広げていくことを目指すプラットフォームで、講談社「ゲームクリエイターズラボ」も参加しています。
「いまの時代に手塚治虫に匹敵するような才能が出てきたら、果たして漫画を描くだろうか。ラップをしているかもしれないし、ゲームをつくっているかもしれません」──。日本を代表する出版社が大きな希望を胸に飛び込んだゲームの世界。その取り組み、ゲームというメディアへの視点、今後の展望を徹底取材!
【K】Karate Combat:その格闘技はもはやゲームです
「K」は、戦略的なデジタル活用が光る、フルコンタクト空手初のプロフェッショナルリーグ「Karate Combat」。ゲームエンジン「Unreal Engine」を用いたバーチャルエフェクトはまるでストリートファイター。そのほかさまざまな仕掛けでY世代・Z世代のファンの心を掴む次世代スポーツです。
Karate Combatは2023年1月、運営組織をDAOへ移行。ファントークンの総価値の50%をファンやアスリートに配布し、ガバナンスを分散化した世界初のスポーツリーグになりました。それにより、リーグ予算、ルール変更、試合のマッチアップ選定などに関する運営の決議にファンが参加できる仕組みに。ファンをただの視聴者ではなく参加者としてとらえ、相互関係のなかでリーグや競技を育てていく、まるで“育成ゲーム”のような側面も? 次世代プロリーグに見るスポーツとゲームのラジカルな融合。その全貌をお伝えします。
【L】Luxury Brands:ファッションDXとゲームコラボ
「L」は「Luxury Brands」をテーマに、高級ブランドとゲームのコラボレーション事例を紹介。広告キャンペーンに「ファイナルファンタジーXIII」の主人公・ライトニングを起用したルイ・ヴィトン、「Pokémon GO」「あつまれ どうぶつの森」などの人気タイトルとコラボを繰り広げるグッチ、同じグループ下のバレンシアガはオリジナルゲーム内でコレクションを発表するなど、ファッションとゲームの距離は急接近しています。その背景にはいったい何があるのか、服飾産業におけるDXにも触れる充実のコラムをお届けします。
【M】MechBird:あるオルタナティブコントローラーの冒険
「M」は、フランスから独創的な“オルタナティブコントローラー”を生み出すプロジェクト「MechBird」をフィーチャー。
一般流通するゲームコントローラーやゲームパッドと異なり、アートとテクノロジーが融合した作品としてのコントローラー。そのムーブメントは、世界最大級のゲーム開発者向けカンファレンス「Game Developers Conference」において2014年より顕在化。独創的なコントローラーを使ったゲームを展示するショーケース「alt.ctrl.GDC」で、クリエイター自ら設計・製作したオルタナティブコントローラーが注目を集め始めました。
「MechBird」は、ゲームデザイナー/アーティストであり、オルタナティブコントローラーの第一人者であるタチアナ・ヴィレラ・ドス・サントスによるプロジェクト。彼女はalt.ctrl.GDCの講演に登場したことも。WORKSIGHT本誌ではMechBirdの美しい作品群をフルカラーで紹介しています。
【N】Non Player Character:能なしのミームが「妖精」になるとき
「N」は、プレイヤーによって操作されないゲーム内キャラクター「Non Player Character」をピックアップ。
RPGで登場する街の住人のように、ゲームの進行上配置されているだけの存在。しかし近年、NPCはソーシャルメディアを通じて“無能の象徴”として扱われるように。2018年のアメリカ中間選挙ではリベラル陣営を揶揄するための「NPC Wojak」が一大ネットミームとなり、TikTokでは「NPCストリーミング」が最も愚かな動画ジャンルのひとつとして話題に。「NPCの女王」の異名をもつTikToker「Pinkydoll」は、このコンテンツにより1日7000ドル以上を稼ぎ出すともいわれています。
Photo: GIPHY公式ページより、「NPC Wojak」の検索画面
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しかし、AIの発展によって状況は変わりつつあります。12人のNPCが繰り広げる視聴者参加型AIリアリティショー「Rival Peak」はシーズン中に1億分以上の視聴時間を獲得し、人びとを熱狂させる十分なポテンシャルを証明しました。一方、このような動向を踏まえてNPCを「メタバース上で最も危険な存在」と見る専門家も。NPCはもはや無能ではない? ゲーム/メタバースやディープフェイクとの関連性、そしてわたしたち人間にとってNPCはどのような存在となっていくのかを考察するWORKSIGHT編集長・山下正太郎によるコラムです。
【O】Obituary:葬儀・FF14・共同体
「O」は“公的な死亡告知”を意味する「Obituary」。2020年4月11日、オンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」のプレイヤーであり、新型コロナウイルスの合併症によって急逝したFerne LeʼRoyを追悼するパレードが同ゲーム内で執り行われました。
コロナ禍で“看取り”を記録してきたフォトジャーナリスト・小原一真さんは、バーチャル空間で執り行われた葬儀に何を見たのか。仲間の死を共有し、弔うために距離を超えて形成されたある共同体のストーリーを追います。
【P】Play The Game:遊びとゲームの本棚
「P」は、読者をゲームの世界へと誘うブックリスト、その名も「Play The Game」。「遊ぶことの哲学」「ゲームで現実を動かす」「ゲームを考察する」「ゲームは創作を刺激する」「ゲームをつくってみる」の5つのテーマにそって、ゲームの多面性に迫る計80冊をセレクト。カイヨワ、ホイジンガ、イェスパー・ユールにジェイン・マクゴニガル。気になる1冊に出会えるかもしれません。
上段左から、『遊びと人間』(講談社学術文庫)ロジェ・カイヨワ 著、『ホモ・ルーデンス:文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み』(講談社学術文庫)ヨハン・ホイジンガ 著、『幸せな未来は「ゲーム」が創る』(早川書房)ジェイン・マクゴニガル 著、『ハーフリアル 虚実のあいだのビデオゲーム』(ニューゲームズオーダー)イェスパー・ユール 著
下段左から、『ゲーミフィケーション:〈ゲーム〉がビジネスを変える』(NHK出版)井上明人 著、『ルールズ・オブ・プレイ(シリーズ)』(ニューゲームズオーダー)ケイティ・サレン/エリック・ジマーマン 著、『インディーゲーム・サバイバルガイド』(技術評論社)一條貴彰 著、『上田文人の世界:言葉のないゲームはどのように生まれたのか?』(KADOKAWA)「上田文人の世界」制作委員会 著
【Q】QAnon:代替現実ゲームと陰謀論の交差点
「Q」はメディア美学者・武邑光裕さんによる陰謀論集団「QAnon」と「代替現実ゲーム」(Alternate Reality Game/ARG)に関する論考をお届け。
4chanでの投稿を機にコミュニティ化し、ソーシャルメディア・プラットフォームで支持を集め、いまや政治的言説にまで影響を及ぼしているQAnon。その活動を、世界を舞台にしたスカベンジャー・ハント(宝探し、謎解きゲーム)、すなわちARGであると指摘するのは、イタリアの作家集団「ウー・ミン」のひとり、ロベルト・ブイ。重層的なストーリーテリング、コミュニティへの参加、謎解きの重視…… QAnonとARGの交差点を解き明かす重厚なコラムをお見逃しなく。
Photo by Sean Rayford/Getty Images
【R】Random Access Movie:映画×ゲーム=名前のない物語
「R」は、2022年の話題作「Immortality」で注目された異色のメディア「ランダム・アクセス・ムービー」。
残された映像作品を手掛かりに、消えた映画女優の謎を解き明かすミステリーアドベンチャー「Immortality」。映画でありながら鑑賞者の操作を必要とし、観る者にハイレベルな没入感と新体験を与えるインタラクティブ性の高い作品として話題になりました。
いわば映画鑑賞とゲームプレイのハイブリッドともいえる未知のメディア「ランダム・アクセス・ムービー」について、実際に「Immortality」をプレイしたWORKSIGHT外部編集員が解説します。お見逃しなく!
【S】Serious Games:社会課題と向き合う11のゲーム
「S」は「Serious Games」と題し、社会を映す鏡としてのゲーム11選をお届け。近年、開発エンジンのコモディティ化などによりゲーム開発が手軽になり、テーマの多様化が進んでいます。その結果、気候変動、孤立や分断、LGBTQ+、監視社会、メンタルヘルスなど社会的なテーマを表現するゲームも増加。コロナ禍で人びとが直面した“分断と孤立”をテーマとした「DEATH STRANDING」、気候変動に争い生態系を再構築する「Terra Nil」、セクシャルマイノリティの当事者の違和感や不安を表現するノベルゲーム「A YEAR OF SPRINGS」、インターネットを心の拠り所にする地雷系少女を人気配信者に育てる「NEEDY GIRL OVERDOSE」など、社会性のあるゲームをセレクト。
【T】Tomo Kihara:AIのまちがいがヒトにもたらすもの
「T」は、「思索のための玩具(Toys for Thought)」をテーマに、実験的なゲームやインスタレーションを開発するメディアアーティスト/ゲーム開発者の木原共さんのインタビューをお届けします。
AIに歩行者として認識されないように工夫して横断歩道を渡る「How (not) to get hit by a self-driving car」、ある絵のテーマをAIと人間が推測し、どちらが早く当てられるかを競う「Deviation Game」など、AIを用いたゲーム性の高い作品で知られる木原さん。「"安全な事故"を起こす」をキーワードに、ヒトがAIに触れ、今後AIと協働していく上でのゲームの重要性について尋ねました。
【U】Unity/Unreal Engine:ゲームエンジンとアセット職人たち
「U」は、ゲームエンジンのみならず、ビジュアルや音、動きといったゲーム中の"素材"のマーケットプレイスを展開する「Unity」「Unreal Engine」にフォーカス。
ゲーム開発のエコシステムを理解するために欠かせないのが、「Steam」をはじめとするゲーム販売プラットフォーム、「Unity」「Unreal Engine」といったゲームエンジン、そしてゲーム中の素材を売買するアセットマーケットの存在です。街や乗り物の3Dモデル、開発ツール、キャラクターの動きや音、エフェクトまでさまざまなものが含まれる“アセット”。Unreal Engineが運営する「Unreal Engine Marketplace」では4万点超がリリースされており、最高月収が5000ドルを超えるアセットクリエイターも存在するといいます。
ゲーム開発のエコシステムの図解とともに、ゲーム業界外ではあまり知られていないアセットマーケットの実態を読み解くコラムです。
【V】Virtual Photography:ゲームのなかで写真を撮る、というお仕事
「V」は注目を集めているカルチャー「バーチャルフォトグラフィー」にフォーカス。近年フォトモードを備えたゲームも増加し、"バーチャル空間で写真を撮影する”という行為が一般化しています。Instagram で「#virtualphotography」と検索すると、320万以上の投稿が出てくるほどです。
そんななか、バーチャルフォトグラフィーの撮影を生業とする写真家も登場。WORKSIGHTでは、いま注目すべきバーチャルフォトグラファー「Élise Aubisse」「Shinobi」「えこちん」「VPCONTEXT」の4組の活動に迫り、彼らの作品を紹介する誌上ギャラリーを展開。新たなムーブメントをその目に焼き付けて。
Photo by Hironori Kim
【W】Worldbuilding:みんなが「世界」をつくり、群島をなす
「W」は、SFやファンタジー小説など、架空の世界を構築する技術として語られてきた「Worldbuilding(ワールドビルディング)」。
都市や国を構成している”システム"を、合理性と一貫性をもって自らで設計するという高度な情報処理が求められるワールドビルディング。その概念の背後にある劇的な社会の変化を、ゲームをゲームたらしめている”双方向性”という特質に触れながら、世界的なアートキュレーターであるハンス・ウルリッヒ・オブリストのことばをもとに読み解く。
【X】 X:イーロンのゲーム実況とSNSの未来図
「X」は、イーロン・マスクが所有するソーシャルメディア「X」。2023年10月のある夜、マスクは突如Xでゲーム実況を始めました。マスクはなぜゲームという巨大経済圏へとアクセスし、それは彼が断行する改革においてどのような意味をもつものだったのか。そして、「かつてTwitterと呼ばれたソーシャルメディアプラットフォーム」はゲームクリエイターたちは何をもたらすのか。Xをめぐる論考をお届けします。
Photo Illustration by Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images
【Y】 YouTuber:ストリーマーたちの大統領選
「Y」は、ゲーム実況YouTuberをはじめとするストリーマー(配信者)の存在と、政治メディアとしての側面が色濃くなりつつあるゲームに迫るコラムをお届け。
Markiplier(チャンネル登録者数3630万人)、jacksepticeye(同3060万人)、Ninja(同2390万人)など、規模・影響力ともに他ジャンルに劣らないゲームインフルエンサーたち。彼らはゲームという巨大な産業エコシステムの重要な一翼を担う存在でもあります。
ゲームインフルエンサーの影響力が拡大するにつれ、政治の世界でもインフルエンサーマーケティングが主戦場となりつつあります。2020年大統領選の最中には、民主党のプログレッシブ・レフトの旗手アレクサンドリア・オカシオ=コルテスが人気配信者と一緒に「Among Us」をプレイ。16万超の視聴者を前にゲーム実況をしたその経験を踏まえ、The Washington Postのインタビューでは政治的媒体としてのゲームの重要性を説いたほど。
ストリーマーたちをめぐり来る大統領選ではいったい何が起きるのか。WORKSIGHTコンテンツディレクター・若林恵によるコラムです。
【Z】⌘Z by スケラッコ
「Z」は、最新号のカバーイラストを手がけたスケラッコさんによる描き下ろし漫画。テーマは、直前のコマンドを取り消すためのキーボードショートカット「⌘Z」。日常の些細なミスや後悔を「⌘Z」でやり直せたら…… ブラックユーモア溢れる新作漫画、ぜひ誌面でチェックしてください。
次週2月13日は、注目のノンフィクション『虎の血:阪神タイガース、謎の老人監督』の著者・村瀬秀信さんのインタビュー記事をお届け。タイガースの歴史上“最大のミステリー”とされる人物、第8代監督・岸一郎。虚実の曖昧さゆえにノンフィクション作品としては異例のスタイルをとる本作に、WORKSIGHTコンテンツディレクターの若林恵、外部編集員・葛原信太郎が迫ります。お楽しみに。
【新刊案内】
photo by Hironori Kim
書籍『WORKSIGHT[ワークサイト]22号 ゲームは世界 A–Z World is a Game』
「21世紀はゲームの時代だ」──。世界に名だたるアートキュレーター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストが語ったことばはいま、現実のものとなりつつある。ゲームは、かつての小説や映画がそうであったように、社会を規定する経済的、政治的、心理的、そして技術的なシステムが象徴的に統合されたシステムとなりつつあるのだ。それはつまり「ゲームを通して見れば、世界がわかる」ということでもある。その仮説をもとにWORKSIGHTは今回、ゲームに関連するキーワードをAからZに当てはめ、計26本の企画を展開。ビジネスから文化、国際政治にいたるまで、あらゆる領域にリーチするゲームのいまに迫り、同時に、現代におけるゲームを多面的に浮かび上がらせている。ゲームというフレームから現代社会を見つめる最新号。
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]22号 ゲームは世界 A–Z World is a Game』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0929-3
アートディレクション:藤田裕美
発行日:2024年1月31日(水)
発行:コクヨ
発売:学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税
【第3期 外部編集員募集のお知らせ】
WORKSIGHTでは2024年度の外部編集員を募集しています。当メディアのビジョンである「自律協働社会」を考える上で、重要な指針となりうるテーマやキーワードについて、ニュースレターなどさまざまなコンテンツを通じて一緒に探求していきませんか。ご応募お待ちしております。
募集人数:若干名
活動内容:企画立案、取材、記事執筆、オンライン編集会議(毎週月曜夜)への参加など
活動期間
第3期 外部編集員:2024年4月〜2025年3月(予定)
通年の活動ではなく、スポットでの参加も可
募集締切:2月13日(火)正午
応募方法:下記よりご応募ください。