2022年7月のリニューアル以降、「自律協働社会のゆくえ」を考えるメディアとしてさまざまなテーマを取り上げてきたWORKSIGHT。年4回のペースで発行してきたプリント版は、今年初めに刊行したゲーム特集号で6冊目を迎えました。
今回のニュースレターでは、プリント版『WORKSIGHT』を取り扱う全国の書店様からのメッセージを紹介します。”本のプロフェッショナル”である書店員は、WORKSIGHTをどう見ているのか。ニュースレターの最後には取扱書店リストも掲載。本誌をご購入される際は、ぜひお近くの書店へお立ち寄りください。
2022年7月のリニューアルから「植物」「ゾンビ」「ノート」「記憶」「詩」「ゲーム」を特集してきたプリント版『WORKSIGHT』。Photo by Hironori Kim
黒田義隆さん(ON READING)
毎号、そう!そう!それ、ちょうどいま気になってたテーマ!というドンピシャなタイミングで発売される奇跡の雑誌。中身はといえば、もう想像を遥かに超える深堀り&飛躍の充実したコンテンツが目白押し。新しい視座や気づきに満ちていて、またここからさまざまな思索が枝葉のように伸びていくのがなんとも楽しい。いま一番楽しみな雑誌のひとつです。
安樂聡美さん(九大伊都 蔦屋書店)
最新号が出るたび、次号の特集が気になる。
さまざまな雑誌が陳列される棚で、『WORKSIGHT』が放つ光は、挑戦的で自由でクールで……という事実が、本屋にとってまずはありがたい。
広告収入に頼ることもなく、純粋に読者の知的好奇心を刺激し、次の一歩をふみだすためのブックガイドも豊富。
他にはない多様なテーマで魅力を維持し、肩肘張らずに読み進められる。どこから読み始めても面白く、ポップな佇まいだけれど、軽く浅い書籍では決してない。時間をかけて丁寧につくられた、愛情のようなものまで感じとれる。
つくり手と読み手がこれほど熱い握手を交わしている雑誌はないのでは?
山下貴史さん(京都大学生活協同組合 ショップルネ)
本をつくるということは、その著者の人格のようなものを、本という具体的な形に仕立て上げることにほかならない。
──島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』(新潮社)より
わたしにとって、『WORKSIGHT』は、まさにつくり手の意思と意志を感じる本で、このご縁を大切にしたいと思いました。ここに『WORKSIGHT』2冊との出会いを添えさせていただきます。
1冊の『WORKSIGHT[ワークサイト]17号 植物倫理 Plants/Ethics』。自然と視線を絡め取られる表紙、片隅に佇む密やかな「植物倫理」の文字。ページをめくると、「岡﨑乾二郎」、「ヒルデガルト」、「オーウェル」、「ブライアン・イーノ」など、個人的にも惹き寄せられずにはいられない数々の固有名詞。それが、『WORKSIGHT 17号』の第一印象だった。
ドラマ「らんまん」と牧野富太郎の話題が芽生え始めた頃の通勤途中や休憩のひとときに。通り過ぎる大木の傍らで、路傍の一輪一葉が視界に映る瞬間に、心の少しの余白で静かに踊るアフォーダンス。遥かに成熟した存在から定点観測され、全てを見透かされている。そして若干の哀れみを込めた慈悲の眼差ざしを向けられている。『WORKSIGHT 17号』との出会いは、そんな気恥ずかしさと抱擁の心地良さに、より一層身を委ねていた時期だった。生命体の知性、そして感情の有無を語る「わたしのおこがましさ」をまずはそっと脇に置かなければ。そう感得したときから、わたしの「植物」を語る時間は、「植物」と語る時間へ開かれた。
1冊の『WORKSIGHT[ワークサイト]19号 フィールドノート 声をきく・書きとめる Field Note』。細分化された知世界と連動する、旧態依然の硬直した書店の棚。京都大学で本と携わるわたしは、世界を、実存を引き受けたことば、思想を伝えたい。世界とその実相のひと欠片の、知の世界の瞬きを日々どう提示すればいいのだろうか? 『WORKSIGHT 19号』は、年と共に衰えて、ショボショボ、ゴリゴリッとしていたわたしの眼に注がれた清冽な1滴だった。
『WORKSIGHT』は、知の鉱脈へ向けて、多彩な視座から、広範な射程で放たれている。そのテーマ、及び「ブックガイド」を参照すれば、大学での学びにおいてもあらゆる領野に実りをもたらすのでは、と思う。新しい目で世界を、もっと遥かを見渡せる。生まれ落ちたこの世界、Fieldを駆け抜けるために、裸の視力はまだ取り戻せる。
「1冊の本」との出会いは常にある。それは奇跡的なバランスで希少な恩寵なのかもしれないけれど、きっとこれからも存在する。わたしにとっての『WORKSIGHT』は、そんなささやかだけど大切なことを思い出させてくれる「1冊の本」です。
韓千帆さん(恵文社一乗寺店)
より視界を晴らし生きていくためのいくつもの道があり、手立てがあり、糸口がある。時にはことばや人がもつ内面そのものに、人間以外の生物に頼り、日々を暮らし重ねていく。わたしはこういった「術」の断片や、極めて個人的な声を拾い上げていく本を読みたかったんだろうなと、目を通すたびしみじみと実感します。
小村美遥さん(SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS本店)
魅力的なブックデザインが目を引き、新鮮なテーマが探究心を掻き立てる。
ジャンルを横断してさまざまな視点から捉える当書のスタイルは、ページをめくるたびに新しい発見がある。読みながら絶えず思考することで世界が少しずつ開かれ、広がっていくように感じる。読後も、当書で紹介される本や音楽に触れることで興味や思考が枝葉のように広がり、いつの間にか生活のなかに根を張る。
本を読み、知が満ちていくことの喜びを感じる、心強い書籍。
井手ゆみこさん(ジュンク堂書店 池袋本店/人文書担当)
「ポストヒューマン」ということばが知られてきた頃、真正面から「植物倫理」という特集を組んだ新しい雑誌(それが元々は「働くしくみと空間をつくる」をテーマとしたものであったとは!)が刊行されたときの嬉しい気持ちを鮮明に覚えています。
それから毎号、『WORKSIGHT』の特集がいま注目のトピックを知るためのひとつの指針となっています。内容も毎回捨てるところなしの充実度で、こんなに隅から隅まで読みたくなる雑誌ってあるでしょうか。人文書フロアでいま一番推したい雑誌です!
堀部篤史さん(誠光社)
ワンテーマから複数の分野に枝分かれするというスタンスを固持した、いまどき珍しいほどオーセンティックな雑誌。ゲームにせよゾンビにせよ、特集が複数のコンテクストを帯びているがゆえ、どの棚に配置するかは本屋として腕の見せどころであり、扱い甲斐のある刊行物です。
岡田基生さん(代官山 蔦屋書店/人文コンシェルジュ)
これからはどんなふうに働けばいいんだろう、とわたしは日々考えている。
この問いに対して、ワークライフバランスやリモートワークなど「働き方」に関するアイデアや解決策を出せば十分だろうか。
十分とはいえない。その発想自体が、いまの社会の仕組みのなかでの「当たり前」に絡め取られてしまっているからだ。もっと深く、あるいは、斜めから見ること。社会のなかにいながら社会を外から見るような、アクロバティックな振る舞いが必要だ。
「働く場」から「社会」へ、扱う領域を広く深くした『WORKSIGHT』は、そんな「曲芸」の作法を教えてくれる。
本誌の魅力として特に感じるのは、印象的なビジュアルと、重厚なブックリストだ。視覚によってすぐさま直感的に、そして、体験知と学問の蓄積を参照することによってじっくりと、「当たり前」が揺さぶられていく。
各号の特集内容を簡単に要約することはできない。たいてい消化不良が起こる。しかし自分自身のなかに複数の視点が生まれ、次第に「社会への見方」が変わっていることに気付くことになる。
篠田宏昭さん(増田書店)
ひとりで本屋に行くようになったのは、発売日を待ち望むような雑誌を得たことが理由だった。多くの人と同様にそういった雑誌を舐めるように読んだ。雑誌のどのあたりで誰が書いた何についての文章で読んだのかが頭に転写されていて、会話をするときはその雑誌をめくって頁を思い浮かべながら話した。紹介されていた本やCDを手に入れたくて、出かける場所は増え、移動する距離は長くなった。歩き回るうちに物の探し方を覚え、よく行く店ができ、そこで人と出会い、町が輪郭をもって立ち上がった。それが次第に自分の地図となっていった。
雑誌の発売を待ち望むことは、意中の作家の新刊を待望するのとは違った。わたしにとって雑誌は自分の知らないことが載っているものであり、そこに書かれていることに必死になってついていくのは不思議と苦しくなく、むしろ好ましいことだった。書いてあることの九割がた知らないというのでも読むことに問題がなかった。雑誌には手がかりがいくつも用意されているということなのかもしれない。どこかは掴むことができ、自分なりのルートで昇ることができる。
何かを知るとそこが自分の見ている世界のアウトラインになる。そのラインが引かれて初めて、ラインの向こうに未知の世界が広がっていることが意識される。夢中になって読んだ雑誌はそのアウトラインを少しずつ、時には一気に押し広げた。そしてアウトラインの向こうは常に広大だった。広大さを測ることはできないのだが、そう感じさせるのが雑誌だった。端があるとは到底思われない。角度や構図を変えて対象を描き出し、自分の一面的なものの見方を正されもした。世界は平面ではなく、空間なのだと意識させられた。
1号手に入れて読む。それだけではこの1冊がどういったことを言おうとしているのか判然としない。次の号も手に入れて読む。やはり判然としないので、前号を読み返す。次の号を買う、を繰り返す。何号か手に入れて点が線になり始める。なんとなく感じるものがあっても、わかるというところまではいかない。しかし、明確に意図と意志がある。それが編集というものの力なのだろう。そういった体験を雑誌には求めてしまう。
『WORKSIGHT』という雑誌は知らなかったが、リニューアルした17号の案内を見て、そこでも取り上げられているレベッカ・ソルニットの一連の仕事をおもった。その仕事のなかでも特に『ATLAS』シリーズが想起された。発売が楽しみな雑誌は久しぶりだった。実物を手にして読み、特集は、当時店員が教えてくれた伊藤潤一郎の連載に、店でのお客さんとの会話に出た庄野潤三の堅牢な生活感に接続された。以降の号についても書き連ねることができるがキリがないのでやめておく。
単純化し言い切るような本は多いが、それは世界を狭いと見なすことと同義であり、いうほどに売れているわけでもない。名状し難いものに取り組み続けるのは易しいことではなく、溢れるものを掬い続ける作業には終わりがない。だが、だからこそ手にとるということがある。本屋に身を置く者として、読者と『WORKSIGHT』をつなげる手伝いができたら嬉しい。今後も楽しみにしています。
奈良匠さん(まわりみち文庫)
ひとつのテーマを多角的に掘り下げたコンテンツが誌面のなかに共生している。社会のあるべきかたちを象徴しているような雑誌です。
神谷康宏さん(有隣堂 事業開発部 店舗開発課/誠品生活日本橋)
ひところ流行った“意識高い系”というワードは、その対象になったものの考え方やそう考える人たちを揶揄するニュアンスをあらかじめ含んでいたが、それはひとえに“意識高いこと”それ自体が目的になっていたからではなかったか。コクヨ株式会社が『WORKSIGHT』というウェブサイトの運営や雑誌の刊行を通じて提唱する“自律協働社会”は、仮に“それぞれの個人が多様な価値観を尊重し合い、それぞれの個性と能力を発揮することで自己実現と他者貢献が両立し、誰もが活き活きとつながりあえる社会”とまとめることができると思うが、肝要なのはこのような概念を口先で唱えて頭いい風に装い、かっこつけることが目的なのではなく、そのような社会自体をいかにこの閉塞した共同体に実現するか、あくまでその具体的な仮説の構築と実践なのだろう。
一企業が少なくないコストを投じて継続的にこの試みを行っていること自体が美しいし、この刊行物が都度開いていく情報と思索の量と質はただごとではない。自らの向上のため、と同時に月並みなことばだが我々の暮らすこの場所をもう少し居心地のいい、まともな場所にするためのヒントが『WORKSIGHT』には多く含まれている。
【取り扱い書店リスト(五十音順)】
WORKSIGHTプリント版を数多く取り扱っていただいている書店をご紹介します。ぜひお近くの書店でお買い求めください。
青山ブックセンター本店
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山ガーデンフロアB2F https://aoyamabc.jp/
梅田 蔦屋書店
〒530-8558 大阪府大阪市北区梅田3-1-3 ルクア イーレ9F
https://store.tsite.jp/umeda/
往来堂書店
〒113-0022 東京都文京区千駄木2-47-11
https://ohraido.com/
ON READING
〒464-0807 愛知県名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A・2B
https://onreading.jp/
紀伊國屋書店 梅田本店
〒530-0012 大阪府大阪市北区芝田1-1-3 阪急三番街
https://store.kinokuniya.co.jp/store/umeda-main-store/
紀伊國屋書店 新宿本店
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-17-7
https://store.kinokuniya.co.jp/store/shinjuku-main-store/
九大伊都 蔦屋書店
〒819-0388 福岡県福岡市西区九大新町5-1 いとLab+
https://store.tsite.jp/kyudai-ito/
京都岡崎 蔦屋書店
〒606-8342 京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13 ロームシアター京都 パークプラザ1F
https://store.tsite.jp/kyoto-okazaki/
京都大学生活協同組合 ショップルネ
〒606-8301 京都府京都市左京区吉田泉殿町 京大西部会館
https://www.s-coop.net/shop_guide/yoshida_shop/#shop_lune
曲線
〒980-0871 宮城県仙台市青葉区八幡2-3-30
https://kyoku-sen.com/
銀座 蔦屋書店
〒104-0061 東京都中央区銀座6-10-1 GINZASIX6F
https://store.tsite.jp/ginza/
恵文社一乗寺店
〒606-8184 京都府京都市左京区一乗寺払殿町10
https://www.keibunsha-store.com/
SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS本店
〒150-0047 東京都渋谷区神山町17-3 テラス神山1F
https://www.shibuyabooks.co.jp/
ジュンク堂書店 池袋本店
〒171-0022 東京都豊島区南池袋2-15-5
https://honto.jp/store/detail_1570019_14HB320.html
ジュンク堂書店 吉祥寺店
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-5 コピス吉祥寺6〜7F
https://honto.jp/store/detail_1570063_14HB320.html
誠光社
〒602-0871 京都府京都市上京区中町通丸太町上ル俵屋町437
https://www.seikosha-books.com
誠品生活日本橋
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-2-1 COREDO室町テラス2F
https://www.eslitespectrum.jp/
代官山 蔦屋書店
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町17-5
https://store.tsite.jp/daikanyama/
tuii books
〒840-0831 佐賀県佐賀市松原1-3-15 徳久ビル
https://www.instagram.com/tuii_books/
TSUTAYA BOOKSTORE 下北沢
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-11-15
https://tsutaya.tsite.jp/store/lounge/detail/2237/
twililight
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂4-28-10 鈴木ビル3F
https://twililight.com/
bullock books
〒329-2514 栃木県矢板市長井1840
https://bullock-books.stores.jp/about
ひばりブックス
〒420-0839 静岡県静岡市葵区鷹匠3-5-15 第1ふじのビル1F
https://hibari-books.com/
二子玉川 蔦屋家電
〒158-0094 東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川ライズS.C. テラスマーケット
https://store.tsite.jp/futakotamagawa/
BOOK STAND 若葉台
〒241-0801 神奈川県横浜市旭区若葉台3-5-1
https://twitter.com/BOOKSTANDWAKABA
BOOKNERD
〒020-0885 岩手県盛岡市紺屋町6-27
https://booknerd.stores.jp/
ブックファースト 新宿店
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-7-3 モード学園コクーンタワーB1〜B2F
https://www.book1st.net/shop/shinjuku.html
増田書店
〒186-0004 東京都国立市中1-9-1
https://twitter.com/kunitachimasuda
丸善 京都本店
〒604-8032 京都府京都市中京区河原町通三条下ル山崎町251 京都BAL B1~B2F
https://honto.jp/store/detail_1570144_14HB310.html
丸善 丸の内本店
〒100-8203 東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ1~4F
https://honto.jp/store/detail_1572000_14HB310.html
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町7-20 チャスカ茶屋町B1〜7F
https://honto.jp/store/detail_1570065_14HB320.html
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