世界的なブームを起こしてきたキャラクター・ラブブ(右)と、タイBLドラマの人気俳優カップル・「JimmySea」の公式キャラクターである「AVOCEAN」(アボシャン、左)。AVOCEANファンのぬいぐるみ棚より。ジミー(จิมมี่)=チッタラポン・ポーティウィホック(จิตรพล โพธิวิหค)と、シー(ซี)=タウィナン・アヌクーンプラスート(ทวินันท์ อนุกูลประเสริฐ)は、本文で詳述されるようにタイのテレビ局・GMMTVが運営する芸能事務所の所属である photograph by K
タイBLドラマの俳優カップルのキャラクターが、日本でにわかに話題になる出来事が2026年6月に起きた。「世界ご当地キャラグランプリ」における、本投票を前にした国内外の部門の区別を設けない「お試し応援投票」の期間において、1位から10位までのうち、タイのBLドラマのマスコットが7体、GL(ガールズ・ラブ)ドラマの俳優カップル(CP)のマスコットが1体ランクインし、上位をほぼ独占したのである。近年、日本でもタイBL・GLドラマに注目が集まり、各プラットフォームでの映像配信や俳優の来日イベントなどを通じて、一定の人気を博してきた。そのファンダムにおいては認知されてきた俳優カップルのマスコットキャラクターたちが、広く人の目に触れた瞬間ともいえるだろう。
上記のランキングは、本文内で触れられるタイドラマファンのグローバルな動員力による投票結果と目されるが、いずれにしてもここにはわたしたちの多くがまだ知らない新たなキャラクター文化があり、俳優カップルという存在も含めて独自のエコシステム(生態系)が息づいているようだ。現代タイ文学の研究者・翻訳家であり、タイドラマの日本国内でのイベントなどで通訳を務めてファンダムから厚い信頼を得る福冨渉氏に、詳細を尋ねた。
interview and text by Fumihisa Miyata
福冨渉|Sho Fukutomi 1986年生まれ。タイ文学研究者、タイ語翻訳・通訳者。青山学院大学などで非常勤講師を務める。著書に『タイ現代文学覚書:「個人」と「政治」のはざまの作家たち』、訳書にプラープダー・ユン『新しい目の旅立ち』、ウディット・ヘーマムーン『プラータナー:憑依のポートレート』、Prapt『The Miracle of Teddy Bear』上・下など。監修した『まいにちふれるタイ語手帳2026』(白水社編集部編)など語学関連書や教育現場に携わるほか、アピチャッポン・ウィーラセタクン『太陽との対話(VR)』字幕といった映画・映像や舞台芸術における翻訳、近年はタイ俳優の来日イベントでの通訳や司会など、多方面で活躍する。 photograph by Mina Soma
キャラクターも俳優カップルも越境する
──WORKSIGHT編集部の面々は、タイのBL俳優カップルのマスコットキャラクターたちのことを本当に最近知ったばかりなのですが、長らくタイのカルチャーをご覧になってきた福冨さんの目にこうした存在が触れるようになったのは、いつ頃なのでしょうか。
今回お尋ねいただいている、俳優カップルのキャラクターだけが目立つようになったわけではなく、2024年頃にタイにおけるキャラクターのIPビジネスの流行が発生するなかで、俳優カップルのマスコットも目に留まるようになったんです。2024年4月にBLACKPINKのリサがラブブのキーホルダーを身に着けていることから世界的なブームに至ったのは皆さんご存じの通りで、リサの出身国であるタイでも大変な人気を博したのですが、ほとんど同時期、2024年の5~6月に「バターベア」(Butterbear / น้องเนย)というお菓子店の同名のマスコットキャラクターがTikTok上で踊る動画などがバイラルヒットし、一世を風靡していったんです。
──かわいらしい熊のキャラクターですね。
タイ国政府観光庁のキャンペーンや他のお菓子・食品店とのコラボレーションなど、本来の文脈を超えてある意味で融通無碍にその活動を展開していったことも面白いポイントですね。政府が絡んでくるあたりは、海外に向けたソフトパワー戦略が進められてきたことも無縁の話ではないと思います。近年のタイは政権運営をめぐって非常に不安定な状況が続いてきているので、今後そうした政策的なバックアップがどうなるかは不透明ではありますが。
いずれにしても、こうしたキャラクター人気が2024年頃に一気に火がついたわけですが、タイのBL・GLドラマの俳優カップルのマスコットたちが生み出され、人気を博すようになったのも同じ頃なんです。
──そうした同時期の波が存在したのですね。もうひとつ前提としてうかがいたいのが、タイのBL・GLドラマの俳優カップルという独自のありようです。
タイのBL・GLドラマにおいては、「CP(カップル)営業」というマーケティングの方法が存在します。ひとつのコンテンツで人気を博したカップルを、別のドラマやバラエティなどの映像作品、キャンペーンなどに継続して出演させるんですね。その前提となっているのが、テレビ局が芸能マネジメントの機能を兼ねるというタイ独特の背景です。これは最近の話ではなく、例えば1970年にタイ最初期の商業テレビ局として開局し、現在は「ラコーン」と呼ばれるメロドラマで盤石の人気を博しているチャンネル3なども、自前の俳優たちを抱えています。
──歴史のあるビジネスのかたちなんですね。
なかでもBL・GLドラマを牽引しているのは、新興の企業です。巨大エンターテインメント企業・GMMグラミーの関連会社として1995年に立ち上げられたGMMTVは、番組や音楽の制作、俳優やアーティストたちのマネジメント、放送・配信までを手がけていて、多くのBL・GLドラマをつくり、俳優カップルを生み出し、コンテンツをまたいで出演させてきているんですね。他にも、現在力のあるところでいえば、YouTube番組の制作から活動を開始してBLドラマへ進出していった「DMD」(Domundi)という制作会社・俳優事務所もありますが、番組制作側が俳優カップルをつくり展開していく流れが中心にあるのは間違いありません。このような俳優カップルを“推す”ファンダムが形成され成長していくなか、他方で起きたキャラクター文化の流行が合わさって、今回のテーマである数々のマスコットたちが生み出されていったと見ることができるでしょう。
俳優たちを模したのではないマスコットたちが生み出される前の段階で、推しの俳優をかわいくデフォルメしたようなぬいぐるみやキーホルダーはもちろん存在していて、ファンの方がもち歩いている場面は珍しいものではありませんでした。例えばタイ関連のイベント会場にいるわたしの姿を俳優ファンの方が見つけたとき、いつも推しの俳優さんたちの通訳=“声”をわたしが担当しているからか、なぜか光栄にもそのぬいぐるみをわたしがもった写真を撮られる、という場面もありましたね(笑)。
上:2025年7月、タイのバンコクにて女子高生の制服を着てファンと交流するバターベア。「ノーン・ヌーイ」(バターちゃん、น้องเนย)の愛称でも親しまれている photograph by Ploy Phutpheng/SOPA Images/LightRocket via Getty Images 下:2026年7月、中国・上海のポップアップ・ショップでインスタレーション化されたバターベア photograph by VCG/VCG via Getty Images
3世代の疑似的家族?
──そうした前史を踏まえつつ、実際に俳優カップルのキャラクターたちが生まれていった流れをうかがえればと思います。
大きな動きとしてあったのは、GMMTVが所属俳優たちのイメージキャラクターを「MY IDEAL FAN」として形づくっていったことです。俳優たちが、「自分たちの理想のファン」というコンセプトのもと、マスコットのかたちに具現化していったんです。俳優ひとり、あるいはカップル1組にひとつというかたちで次々とキャラクターが生み出されていきました。これが2024年頃のことです。次々と着ぐるみ化され、イベントに登場。それぞれのSNSアカウントも開設されて発信するようになって、人気を獲得していきました。
──たとえばどのようなキャラクターがいるのでしょうか。
最も人気のあるキャラクターのひとつが、「TayNew」カップルのキャラクター、「POLCASAN」(ポルカサン / โพก้าซัง)です。テイ(เต)ことタワン・ウィホックラット(ตะวัน วิหครัตน์)と、ニュー(นิว)ことティティプーム・テーチャアパイクン(ฐิติภูมิ เตชะอภัยคุณ)のカップルの、理想のファンダムを象徴するのが「POLCASAN」。「POLCA」はもともと彼らのファンダムの名称で、ふたりのお気に入りとも、ふたりを形容するともいわれる動物の名前を組み合わせたものです。ニューがシロクマ(Polar Bear)で、テイがシャチ(Orca)ですね。キャラクターもその2種の動物のハイブリッド。ファンダム名に、最近のタイ語ではかわいらしいことばとしても用いられる日本語の敬称「さん」をつけて「POLCASAN」というわけです。
モチーフのみを見れば、特に直接の関係性がないものが結びついているのも面白いですよね。以前から、推しの俳優を特定の絵文字で表現するようなカルチャーも存在していたのですが、その絵文字と絵文字がくっつくといいますか、象徴同士をひとつのキャラクターに合流させたようなところがある。他のカップルのキャラクターでも、同じように象徴をまとめている例はあります。
──キャラクターがある種、引用の織物である、と。
こうしたキャラクターは、もちろんここまでで触れたように推しの俳優のファンダムを象徴していますし、俳優たちの人気に根差した存在ではあります。しかしだんだんとキャラクター単体として離陸していくといいますか、独特の存在感をもつようになっていったんです。例えばTayNewのふたりはすでに10年のキャリアを築いていて、主演作品も継続的に発表され、数多くのファンがいるスターです。要は、いま出てきたばかりの新人で注目が集まる、という段階の人たちではないんですね。そんなふたりの理想のファンダムを具現化したキャラクターが、当人たちの文脈を超えるようにして新しい文脈を生み出して、どんどんと人気を獲得していき、いまではソロの楽曲をリリースするまでになっているんです。
そもそもタイBL・GLドラマというコンテンツの人気が、グローバルなものになっています。中国や東南アジアの各国はもちろん、中南米でも話題で、例えば俳優さんがブラジルでファンミーティングを行うなんてこともある。その広がりのなかで、マスコットキャラクターもまたグローバルな認知を獲得しつつあるんです。
──受肉化した瞬間に、キャラクターは独自の文脈を獲得していくわけですね。
キャラクターが生まれたことによって、BL俳優カップルをめぐって大きく変化した状況を、もうひとつ指摘できると思います。それは、俳優カップルとファンダム、そしてキャラクターたちが、疑似家族のような関係性を形成している、ということなんです。もともとタイドラマのファンダムにおいては、例えばBLドラマに出演した男性ジェンダーの俳優たちを「子」、女性ジェンダーの人たちが多くを占めるファンたちを「母」と呼ぶようになっていました。疑似的な親子、ないし母子の関係性がここには認められます。
もともと日本に比べてタイでは公と私の境界線が曖昧といいますか、むしろ昔の日本に近いところがあるのかもしれないのですが、自分の近所の子どももひとしなみに「子」と呼ぶようなところがあります。それがファンダム文化のなかにもち込まれるなかで少し変節し、親密圏を強化する呼び名として使われている面があると思います。
──そこに俳優カップルの理想のファンダムを具現化するマスコットキャラクターが登場した、と。
そうなんです。すると、キャラクターがBL俳優カップルふたりのことを「お父さん」「パパ」と呼ぶようになり、一部ではファンのことを「おばあちゃん」と呼ぶようになっていったんですね。疑似的な拡大家族、ないしは親族関係といえばいいでしょうか。それはお互いがより強く結びつく親密圏を形成する動きとも見えますし、追ってお話しするように、さまざまな側面が指摘できる現象であるように思います。
上:2025年6月、GMMTVのファンダムに向けた配信番組の映像。数組の俳優カップルたちと、カップルごとのマスコットキャラクターたちが一堂に会している 下:2026年1月にリリースされた、POLCASANのデビューシングル「I am POLCASAN」のMV
「ユースフル」(役に立つ)という寛容の条件
──日本内外の二次創作分野においては、実在の人物同士の関係性に対してフィクショナルな欲望を仮託し表出する「RPS」(リアルパーソンスラッシュ)を戒める文化が存在します。それを踏まえると非常にセンシティブな質問になってしまうのですが、タイBLドラマの俳優カップルの方々は、本当のカップルというわけではないのでしょうか。
タイBL、あるいはGLドラマをめぐっては、俳優も運営側もファンダムも、基本的にその領域については踏み込まないというのが暗黙のルールになっています。どちらかといえばあくまでビジネスなのです、というスタンスを公式的には取りつつ、そこに解釈や妄想の余地を残しているという感じでしょうか。一部のカップルにおいては、あくまで仕事のパートナー、あるいは友人として敬意を示すということをSNSで発信するなどして、リアルなカップルの関係性ではないよというメッセージを提示しているように見える例もありますね。ここにはファンダム側からの過度な介入や詮索を避けるという意図もあるのかもしれませんし、ファンダム経済としての「商品」性を保ちたいという意識も働いているのかもしれません。いずれにせよ、さまざまなパターンがあるだろう、と想像するにとどめたいと思います。
とはいえカップルですから、当然解消するということはありますし、この解消の理由も定かではありません。とはいえここで注目すべきは、キャラクターの行方かもしれませんね。俳優カップルのキャラクターという存在が生まれてからまだ日は浅いわけですが、解消したカップルのキャラクターも出てきているんです。いまのところ、キャラクターのSNSアカウントはまだ動いているようですが。
──なるほど。こうしてお話ししていてふと思い出されるのは、第78回カンヌ国際映画祭〈批評家週間〉グランプリを受賞し、2026年7月より日本でも順次公開されているラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク監督作品『ユースフル・ゴースト』のことです。亡き妻の霊が掃除機に憑依して帰ってくる……という導入から予想外の展開を見せる映画で、福冨さんも日本語字幕におけるタイ語監修を務めておられましたが、BLドラマが多く生み出され、価値観の面でより寛容であるように日本からは見えるタイにおいても、ゲイをはじめとした性的マイノリティの人たちが広く受け入れられているわけではないということに気づかされる作品でもありました。
そもそもタイでBL・GLドラマを楽しんでいるのは若年層が中心です。一方で、年配層には、人間は生まれたときに与えられた性のままで生きて、いずれは結婚して家族をもち子どもをつくるのが当たり前なのだ、という感覚も根強く残っています。世代による感覚の差が大きいんですね。俳優カップルたちのセクシュアリティが明らかにされないというのには、プライバシーと人権の問題はもちろんですが、こうした社会的な文脈も存在すると思います。もちろん日本に比べればタイのほうが寛容に感じられるとは思いますし、性的マイノリティの人たちが“存在してもいい”という感覚は社会全体に漂っていると思います。
ただ、いま“存在してもいい”といったように、また『ユースフル・ゴースト』のラッチャプーム監督が言及している通り、タイはLGBTQにフレンドリーな国でありながら差別は残っており、ユースフルであれば──つまりは社会の役に立ち、貢献する限りは存在を許されるという、条件付きの承認であることがほとんどなんですね。
──寛容には条件がある、と。
2024年には同性婚を可能にする婚姻平等法が公布され、2025年より施行されていますから、徐々に状況は変わってきているだろうとは思います。とはいえ、少し前までのBL・GLドラマであれば、例えばカップルの関係性が親に露呈するとか、主人公が自分たちのアイデンティティに思い悩むといった場面が、作品のひとつの山場としても描かれてきました。
思い返せば、BLドラマが大きく盛り上がったのは、2014年に軍事クーデターが起こった後です。2016年には、『SOTUS/ソータス』というGMMTV制作のドラマが大ヒットし、金字塔的な作品となりました。そのあとも、リベラルな価値観をもつ若い世代が多く共感して見ていたであろうドラマが続けて登場していきます。そうした同世代的な感覚は、2020年以降に学生たちが中心となって起こした民主化運動にまでつなげて考えてみることもできるものでしょう。
『ユースフル・ゴースト』予告編。掃除機に憑依した妻の幽霊をめぐる物語は思わぬ展開を見せ、タイの社会をめぐる数々の問いを突きつける
宙づりの夢を見る
──そうした文脈を踏まえると、俳優カップルとファンダムがお互いを「母」「子」と呼び合い、そこに新たにキャラクターが孫のような存在として生まれるということは、やはりさまざまな問いを含んでいそうですね。
ここまで見てきたようなタイ社会のコンテクストを踏まえながら、ファンダムから見た「子」であるカップルに、さらなる「子」が生まれたという設定で疑似家族関係を編んでいくプロセスには、異性愛規範や伝統的家族観にもとづく「生殖」についての価値基準が入り込んでいるのでは、と思わされることもあります。最も自由であるはずの想像力の場に、最も保守的な家族の枠組みが、かたちを変えながら再生産されてしまう。このねじれに、グロテスクさや暴力性を感じる瞬間があることは否定できません。
ただそれも、両面的だと思うのです。ネガティブな危うさと背中合わせのようにして、ここにはクィアな可能性もまた存在しているとわたしは感じます。カップル営業というスタイル自体が現実とイマジナリーな領域の境界線上に立脚している営みであり、ドラマという営みそのものが想像の力によって成り立っている。そのなかでクィアな拡大家族を思い描いているという意味においては、ここには現実を少しズラしていくような力が宿っているとも見ていいのではないでしょうか。人びとのあいだに介在するマスコットキャラクターもまた、まさに想像力の賜物であるわけですし。
──なるほど。一般的な話として、推しがいるからこそファンが生まれるという意味では親子ないし母子関係が反転したり、二重になったりということも往々にしてあるでしょうし、キャラクターが当初ファンダムの具現化だった点からすればファン自身、ないしは「子」という側面もあるので、どこまでBL・GLドラマに限定した話か、あるいはクィアをめぐる問題なのかは議論の余地がありそうです。とはいえキャラクター発生の歴史はアンコントローラブルで、世代を優しく攪拌していく側面もありますね。
お話ししてきたようなキャラクター文化の今後がどうなるかはわかりませんし、疑似家族関係を築いている誰もが、宙づりの夢のなかに生きているともいえるかもしれません。短い年月のなかで急速に拡大していったそうした夢には、危うさとともにたくさんの可能性があるようにも感じます。例えばGMMTVのキャラクターたちは、すでにブラインドボックスなどのかたちで商品化もされているのですが、管見の限りでは、いまのところその流通はファンダムの内側にほぼ閉じています。これがバターベアのように、生み出された文脈を離れて、キャラクターの由来を知らない人の手にも玩具として渡っていくようなことがあれば、また異なる側面が見えてくるのかもしれませんね。
ファンの生活にとけこむAVOCEAN photograph by K
【WORKSIGHT SURVEY #83】
Q. よく知らないキャラクターに魅かれることはありますか?
生み出された文脈をよく知らない、あるいは背景の設定などにまったく詳しくないキャラクターに魅了されるということはありますか。そうした経験の有無と共に、その理由なども教えてください
【WORKSIGHT SURVEY #81】アンケート結果
共有される沈黙のグルーヴ:チューリッヒの「サイレント・リーディング・レイヴ」を訪ねて(8月18日配信)
Q.日本でも「サイレント・リーディング・レイヴ」のような試みは広がりそうだと思いますか
【はい】読書が好きな人は自分もふくめ周りにもたくさんいるように感じますが、実際に本を読めている時間は以前に比べてすごく減っていると思います。スマホやSNS/動画サイトが一般化したことで、そこまで強くみたいと思っていないのに、つい見てしまうことで結果たくさん時間を取られてしまう。読みたい本はたくさんあるのに積読のまま。。これは私自身の悩みでもありますが、同じような人は周りに結構います。日本は、場や集団の力を借りて行動を変えることがとりわけ得意な人たちだと思うので(笑)、積極的に読書しかできない時間を持てるというのは案外歓迎されるのではないかと思いました。
【はい】小規模なものなら広がると思います。路上で一人、あるいは少人数でプラカードを持ってスタンディング・プロテストや本読みデモをするのはここ数年で自然発生してきたし、小さな独立系書店が似たような試みをしている例もあることからそう思います。大規模なものは拡がらない気がするのは、ビジネスに結びつきそうにないから主催する人がいないのではと思うからです。
【いいえ】日本人の特性として、どうしても「管理したがり、管理されたがる傾向」があると考える。その特性のため、似たような場は作ることができても、このレイブのような、「ゆるやかな制御、相互尊重、自然発生的な静寂」の状態を維持することが難しいのではないか? もちろん、このような場所が成立するなら、参加してみたい。
【いいえ】集まる場所があるだろうか、という懸念からですが、やる意義は大きいと思います。レポートでは「できるけれども、しなくてよい」というメンタリティの大事さが繰り返し語られていましたが、「しなくてよいけど、してもいい」さらに「これもしなくてよいし、あれもしなくてよい」と、自分の“余地”、“空”が広がっていったりして、大らかな気持ちになるのではないかと思います。
次週9月1日は、文学研究者・阪本佳郎さんがルーマニアの奇祭「熊祭り」を訪ねた全7話の特別連載の第1回を配信。新年の祝いと厄除けのために、熊の毛皮を被った人びとが列をなし、家々でダンスを舞い踊るという「熊祭り」。「熊」がわたしたちの前に姿を現すとき、現代社会はいったい何を問われているのでしょうか。熊を追ってルーマニアを巡った紀行随想。旅の始まりを告げる第1話です。お楽しみに。
【新刊案内】
『WORKSIGHT[ワークサイト]30号 新しい中世 The New Middle Ages』
photographs by Hironori Kim
cover Illustration by Natsujikei Miyazaki
帝国、教会、荘園、騎士団、ギルド、修道院……。中世とは、複雑怪奇な権威のネットワークが幾重にも絡み合った時代だった。アルゴリズムに導かれ、プラットフォームの中で群れ、炎上によって見知らぬ誰かを裁くいま、わたしたちはすでに「新しい中世」を生きているのかもしれない。かつて中世の再来を予言したウンベルト・エーコ、 心理占星術研究家・鏡リュウジや現代魔女・円香、中世ゲーム研究、政治学者が読み解く「中世という過渡期」を経た、現在の地政学「それ以降の世界」まで。中世のレンズを通して現代を再解釈する。
【目次】
◉ギャラリー
現代は中世である
◉巻頭言
世界はふたたび中世になる
文=山下正太郎(本誌編集長)
◉ウンベルト・エーコと新しい中世
文=武邑光裕
◉対談
鏡リュウジ(心理占星術研究家)+畑中章宏(民俗学者)
スターゲイザーたちの「合理的」な世界
◉わたしは魔女である
円香が語る「現代魔女」という行き方
◉中世の騎士、東京に集う
ドキュメント「戦え、騎士のように」/証言「騎士たちの理由」/インタビュー「中世剣術のリアリティを、現代で共有したい」
◉ゲームはなぜ中世を必要とするのか
中世ゲーム研究の第一人者、かく語りき
◉コンテンツガイド
中世の回廊
◉「新しい中世」以降の世界
政治学者・田中明彦の予言から読む現代の地政学
【書籍情報】
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]30号 新しい中世 The New Middle Ages』
編集:WORKSIGHT編集部(コクヨ ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0938-5
アートディレクション:藤田裕美(FUJITA LLC)
発行日:2026年7月2日(木)
発行:コクヨ株式会社
発売:株式会社学芸出版社
判型:A5変型/128頁定価:1800円+税
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