その時、その場で"食べる"ということ:WORKSIGHTプリント版・23号「料理と場所 Plates & Places」5月15日刊行!
来る5月15日に刊行される『WORKSIGHT[ワークサイト]23号 料理と場所 Plates & Places』。〈料理×場所〉を切り口に、日々更新されていく食にまつわる営みを浮き彫りにする最新号。その内容を紹介します。
photographs by Hironori Kim
週刊のニュースレターを中心に「自律協働社会」のゆくえを探ってきたWORKSIGHTは5月15日、プリント版最新号『WORKSIGHT[ワークサイト]23号 料理と場所 Plates & Places』を発行する。
どんなに世界が情報化されようと、どんなにグローバリゼーションが進もうと、その時、その場所でしか味わうことのできない”料理”。ラジカルなまでにローカルで、フィジカルで、多元的で、分散的な食の世界は、自律分散社会の最もダイナミックな実践の場と見なすことができるだろう。
世界14カ国から届いた、〈料理×場所〉の切り口でお届けする23のエッセイと、国や時代を超えて食の世界を旅する33冊のブックガイドから、日々更新されていく人びとの営みとしての料理に迫る今号。WORKSIGHT史上、最も”お腹がすく”特集となっている。
【目次・内容紹介】
#1「サフラジストの台所」山下正太郎(WORKSIGHT編集長)
料理|キャロライン・ケーキ/疑り深い夫に捧げるパイ
場所|台所(イギリス・アメリカ)
19世紀後半、女性の政治参加を求めて活動した「サフラジスト」。その活動において、台所は社会的な変革を生み出すための地下活動の中心地となり、レシピはその革命の暗号となった。兵士も銃もない異例の革命を、当時のレシピとともに振り返る。
#2「縁側にて」関口涼子
料理|その日のおすすめ
場所|パリ11区(フランス)
フランス・パリを拠点に翻訳家・詩人・作家として活躍する関口涼子が、レストランやバーにとって「縁側のような場所」と語るカウンター。通勤前のエスプレッソに、歓談しながらつまむサンドイッチ。カウンターを行き交うパリの人びとの人間模様。
#3「バーガー進化論」ジェイ・リー(NOWON)/ブルックス・ヘッドリー(Superiority Burger)
料理|ハンバーガー
場所|イーストビレッジ、ニューヨーク(アメリカ)
ジェントリフィケーションによる価格の高騰化によってバーガーが一大ブームとなっているニューヨーク。バーガー専門店の激戦区であるイーストビレッジに出店したふたりのシェフの証言にみる、バーガーの進化とその可能性。
#4「ハイジのスープ」イスクラ
料理|ゾルヤンカ
場所|ノイエンハーゲン(ドイツ)
東ドイツ時代に定着したというクラシックなスープ「ゾルヤンカ」。東欧など、旧社会主義国での料理を再現したレシピ本『ノスタルジア食堂』で知られるイスクラが、ノイエンハーゲンに住む知人に招かれて参加した”ゾルヤンカをつくる会”を回想する。
#5「素晴らしき早餐」門司紀子
料理|鹹豆漿
場所|MRT善導寺駅、台北(台湾)
台湾の朝ごはんの定番「鹹豆漿」(シェンドウジャン)。おぼろ豆腐状になったスープ、柔らかくなった揚げパン、アクセントのパクチーの香り。過去に50回以上の訪台歴をもつライター/エディターの門司紀子が薦める、早朝5時半開店の名店の味。
#6「トリパス公園の誘惑」岩間香純
料理|トリパ・ミシキー
場所|パルケ・デ・ラス・トリパス、キト(エクアドル)
エクアドルの首都・キトの「トリパス公園」で長年愛されてきた屋台料理「トリパ・ミシキー」。"エクアドルのホルモン焼き"ともいうべきこの料理を食しながら、現地に暮らすアーティスト・岩間香純が伝える屋台文化、そして現地の人びとの生活模様。
#7「パレスチナ、大地の味」サミ・タミミ
料理|マクルバ
場所|エルサレム(イスラエル/パレスチナ)
「同胞が三等国民として扱われながら毎日死んでいくなか、わたしは日々、パレスチナの伝統料理をつくっている」──。エルサレムで育ち、ロンドンのスターシェフとしてのキャリアを経て、パレスチナ文化の啓蒙に励むサミ・タミミの思い。
#8「砂漠のワイルドスタイル」鷹鳥屋明
料理|カブサ
場所|リヤド(サウジアラビア)
日本の6倍近くある国土面積の広さから、東西南北、多種多様な食文化が存在するサウジアラビア。炭水化物・タンパク質・脂質のカロリー爆弾といえる「カブサ」などの食文化を、"中東で一番有名な日本人サラリーマン”で知られる鷹鳥屋明が綴る。
#9「ふたりの脱北者」周永河
料理|冷麺
場所|ソウル(韓国)
韓国学中央研究院韓国学大学院教授であり、東アジア食の人類学・民俗学を研究してきた周永河。脱北者を支援するための社会適応プログラムを介し、2人の脱北者を受け入れ、平壌冷麺をごちそうしたときの”苦い思い出“とは。
#10「マニプールの豚」佐々木美佳
料理|発酵筍と豚肉のカレー
場所|コルカタ(インド)
ドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』の監督で、現在インドに留学中の佐々木美佳。ある日、マニプール州出身の先輩が豚肉のカレーを振る舞ってくれて……。第二次世界大戦の激戦地、マニプールに思いを馳せながら噛み締めた思い出の味。
#11「ディストピアの味わい」The Water Museum
料理|目玉焼き
場所|南極大陸
2091年の南極大陸を舞台に「違法な目玉焼き」を振る舞うSFクッキングゲー ム『Arctic Eggs』。開発者のThe Water Museumはなぜ荒廃した世界と目玉焼きを掛け合わせ、そこで何を描こうとしたのか。ゲームにおける”料理”の変遷を考察する。
#12 「塀の中の懲りないレシピ」シューリ・ング
料理|チョコレートケーキ
場所|刑務所(シンガポール)
喫煙用のマッチで火を起こし、トイレをシンクとして使い、誕生日にはチョコレートケーキを焼いた1970〜80年代のシンガポールの囚人たち。書籍『When Cooking Was a Crime』で彼らの食を描き出したフードジャーナリスト、シューリ・ングの語り。
#13 「慎んで祖業を墜すことなかれ」矢代真也
料理|お茶漬け
場所|烏丸丸太町、京都(日本)
フリーランス編集者であり、京都の老舗呉服屋「矢代仁」の経営に携わる矢代真也。自身が「ソウルフード」と呼ぶのは、家族ぐるみで30年以上通う「丸太町十二段家」のお茶漬けと出汁巻き卵だ。受け継がれる京の味と商いの哲学。
#14「アジアンサイケ空想」Ardneks
料理|ビーフルンダン
場所|ジャカルタ(インドネシア)
マック・デマルコや幾何学模様などのアートワークを手掛けるジャカルタ在住のイラストレーター・Ardneks。インド、イラン、日本などの空想旅行をテーマにした作品集『COASTALVISION:Heavily-saturated Tropicália』を中心に、各国の食文化を語る。
#15 「アメイジング・オリエンタル」Go Kurosawa
料理|納豆とココナッツドリンク
場所|ロッテルダム(オランダ)
幾何学模様のメンバーで、現在はアムステルダムを拠点に活動するGo Kurosawa。ツアー先の都市でもよく訪れるアジアンマーケットでは近年、アジア人の"コモングラウンド感”を覚えるという。アジア人が内面化する「アジアン」をめぐる思案。
#16「旅のルーティン」合田真
料理|ピリピリ
場所|マプト(モザンビーク)
2006年からモザンビークで事業に取り組み、日本とアフリカ各地を行き来する合田真。伝統的な調味料「ピリピリ」を用いた料理、地鶏のガリーニャを使ったフォー、伝統料理のマタパ、ローカルビールの2Mまで、「おいしい」の旅の記憶を辿る手記。
#17「タコスと経営」溝渕由樹
料理|ギザード
場所|メキシコシティ(メキシコ)
ヴィーガンクッキーを製造・販売するアメリカンベイクショップ「ovgo Baker」の創業者・溝渕由樹。2024年初頭、食の面白さに立ち返るために訪れたメキシコ。「ギザード」「カナスタ」など、日本では出会えない食の多様性にふれた旅を回想する。
#18「摩天楼ジャパレス戦記」佐久間裕美子
料理|ラーメン
場所|ミッドタウン、ニューヨーク(アメリカ)
1990年代のスシブーム、2000年代の和食レストランの出店ラッシュなど、時代とともに移り変わるニューヨークの「ジャパレス」の風景。1杯22ドルの「ピザ・ラーメン」に思いを馳せながら綴る、ニューヨーク在住の佐久間裕美子によるジャパレス戦記。
#19「石炭を舐める」𠮷田勝信
料理|ムシー・ピーズ
場所|ウェイクフィールド(イギリス)
1947年には150カ所超の炭鉱があり、現在は国立炭鉱博物館がたたずむイギリス北部ヨークシャー地域のウェイクフィールド。暗闇で行われた採掘では、人びとは石炭の層か否かを舐めて判別したという。採集者・𠮷田勝信が辿る、石炭と人びとの営み。
#20「パーシャとナレシュカ」小原一真
料理|サーロ
場所|スラブチチ(ウクライナ)
写真家・小原一真が、チェルノブイリ原発事故の避難者のためにつくられた街で出会ったパーシャとナレシュカ。その記憶を、豚の背脂を塩漬けにした料理「サーロ」を囲んだ宴、アルメニアの郷土料理が並ぶふたりの結婚式の食卓とともに振り返る。
#21「エベレストのジャガイモ」古川不可知
料理|リキクル
場所|ポルツェ村(ネパール)
ヒマラヤ登山隊に欠かせないシェルパと、彼らにとって大切な食べ物であり続けるジャガイモ。2013年、エベレストの標高3800mに位置するポルツェ村に約1年間滞在した文化人類学者・古川不可知が懐かしむ、ジャガイモを使った料理の数々。
#22「火光三昧の現場へ」野平宗弘
料理|苦い草の鍋
場所|ホーチミン(ベトナム)
ベトナム文学・思想の研究者、野平宗弘。約30年前、ベトナム留学中に食べた「苦い草」(ザウ・ダン)入りの鍋料理が忘れられず、2024年に現地の老舗を訪れた。不思議な縁に導かれ、老僧ティック・クアン・ドックの追悼公園へ辿り着き……。
#23「収容所とただのピザ」今日マチ子
料理|ピザ
場所|オシフィエンチム(ポーランド)
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所と、空いていたカフェで食べたピザ。ひめゆり平和祈念資料館と、向かいの食堂で食べたソーキそば。作家として戦争を扱う混乱、不安、恐怖と対峙しながら思い出す、取材で訪れた現地の味。
料理本で旅する:未知の世界へと誘う33冊のクックブック
その時代、その場所に生きる人の経済・社会・文化情報が圧縮されている料理本。「時代を旅する」「作家の世界を旅する」「架空の世界を旅する」「遠い異国を旅する」「日常を旅する」の5テーマ、計33冊の料理本から、いざ未知の世界へ旅立とう。
【書籍詳細】
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]23号 料理と場所 Plates & Places』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0930-9
アートディレクション:藤田裕美
発行日:2024年5月15日(水)
発行:コクヨ株式会社
発売:株式会社学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税