フィールドワークの現在地:WORKSIGHTプリント版・19号「フィールドノート 声をきく・書きとめる」本日4月27日刊行です【特別ニュースレター】
WORKSIGHTプリント版、19号の特集は「フィールドノート」。複雑化し断然が進む世界で、わたしたちはどのようにして、語られない「声」と向き合うことができるのか。スケートボード、フィールドレコーディング、郷土料理、文化人類学、ChatGPT…他者の「声」に耳を傾け、書き留めることの現在地。
Photograghs by Kaori Nishida
「働くしくみ」と「ワークプレイス」を取り扱うメディアから、そのスコープを「社会」へと大きく広げ、昨年7月のリニューアルより「自律協働社会のゆくえ」を探索してきたWORKSIGHT。
本日、書籍『WORKSIGHT[ワークサイト]19号 フィールドノート 声をきく・書きとめる Field Note』を刊行しました。
19号のテーマは「声をきくこと・書きとめること」。
発せられているのにきこえていない「声」をきき、記録し、伝えていくことは、思いのほか難しいものです。ますます世界が複雑化するなか、わたしたちはどのような態度で、人と、そして人以外の存在たちと向き合えばいいのでしょうか。どうすれば、行為の一方的な「対象」としてではなく、相互的な「関係」を相手と築くことができるのでしょうか。
本特集では、スケーターを撮影し続けるプロジェクト「川」や、50年来「野外録音」を行ってきた英国音楽界の鬼才デイヴィッド・トゥープ、スケートボードから都市論・建築論を導く文化史家イアン・ボーデンに、これまでの活動から「きく」ことのヒントを取材しました。さらにはフィールドノートのプロ、文化人類学者4名の実際のノートとインタビュー、近年注目を集める「津軽あかつきの会」がつなぐ伝承料理のレシピについてのルポルタージュ、「哲学対話」を行う永井玲衣さん監修・人の話を「きく」ためのプレイブックなどを収録しています。
そのほかにもWORKSIGHT編集部が選書した「未知なる声を聴く」ブックリストや、本誌編集長による、ChatGPTとの対話に関する渾身の論考など、「声」をきくこと・書きとめることの困難と可能性を探ります。
目次に沿って、本号の内容をご紹介いたします。
◉巻頭言・ノートという呪術
文=山下正太郎(WORKSIGHT編集長)
私たちはノートに何を書き留めているのか。実務的なメモを記す「手帳」と異なる、自分自身の思考の断片を書き残す「手帖」にはどんな小宇宙が広がっているのだろうか。本誌編集長が、1,600冊の私物の手帳類を所蔵する「手帳類図書室」を訪れ、思い巡らせたことを綴る。
◉スケーターたちのフィールドノート
プロジェクト「川」の試み
スケーター、郊外、草花を撮影し、書籍や展示を通して、ヴィヴィッドな写真を世に問い続けているプロジェクト「川」。二人のフォトグラファー、荒川と関川は、どんな態度でファインダーを覗き、シャッターを切っているのか。インタビューで尋ねた。
◉スケートボードの「声」をめぐる小史
文化史家イアン・ボーデンのまなざし
「スケートボーディング」という営みを通じて都市論・建築論に新風を吹き込んだ英国の文化史家イアン・ボーデン。スケーターたちの運動の中に言語化されない「声」を聴き取る、80年代から始まった探求は、いかに始まり、2023年の現在、どこにたどり着いたのか。ボーデン自身のことばでたどる。
◉ノートなんて書けない
「聴く・記録する・伝える」を人類学者と考えた
松村圭一郎・足羽與志子・安渓遊地・大橋香奈
人類学者は、フィールドノートのプロフェッショナルだ。しかし当人たちは常に、フィールドノートの”困難”と向き合っている。「聴く」「記録する」「伝える」すべてが大変なのに、それでもフィールドに足を運ぶのは、可能性があるから。人類学者4人にノートを見せていただきながら、これまでの経験や胸の内を尋ねた。
◉人の話を「きく」ためのプレイブック
哲学者・永井玲衣とともに
そもそも、人の話を「きく」とはどういうことだろう。毎日誰かと触れ合い、その言葉を耳にしながらも、「きく」ということは存外に難しい。「哲学対話」を実践する永井玲衣に「きく」ためのヒントを挙げてもらいつつ、編集部3名が「きく・きかれる」ことについて話し合った。
◉生かされたレシピ
「津軽あかつきの会」の営み
青森県弘前市石川地区で、80代から30代までの地元女性たちが集い、伝承料理のレシピを書き留めながら料理をつくり提供している「津軽あかつきの会」。彼女たちは世代を超えてどのように関係を築きながら、レシピを受け継いできたのか。WORKSIGHT編集部員が津軽に赴き、輪のなかに入り話を聞いたルポルタージュ。
◉野外録音と狐の精霊
デイヴィッド・トゥープが語るフィールドレコーディング
音の境界を越え、聴くという行為を常に拡張してきた、英国音楽界の鬼才デイヴィッド・トゥープは、50年来続けてきた「野外録音」をどのようなものとして捉えているのか。それは認識の拡張なのか、植民地主義の延長なのか。インタビューに加え、トゥープが選ぶ必聴フィールドレコーディング11選も紹介する。
◉それぞれのフィールドノート
未知なる声を聴く傑作ブックリスト60
「フィールドノート」をテーマに、編集部が60冊を厳選。都市へ、未踏の地へ、日常の中へ、人へ、ものへ、心の内へ。それぞれのフィールドで声にならない声を採集した、古今東西の傑作「ノート」をリストアップ。
◉ChatGPTという見知らぬ他者と出会うことをめぐる混乱についての覚書
文=山下正太郎
「GPT-4」の登場で2023年最大のゲームチェンジャーとなった「対話型AI」。わたしたちはAIが紡ぎ出す「言葉」とどう向き合うことが可能なのか。ChatGPTは、わたしたちにいったい何を問い返しているのか。本誌編集長が整理してみた。
【イベント情報】
WORKSIGHT19号 刊行記念、特別インスタライブ開催決定!
『WORKSIGHT 19号 フィールドノート 声をきく・書きとめる Field Note』の刊行を記念して、5/10(水)の夕方から夜にかけての3時間(!)特別インスタライブを開催いたします。特集にご協力いただいたゲストをお迎えして、ラジオの特番のようなオンライン生配信を行います。
今回は配信に加えて特別に会場観覧席をご用意しました。配信のベースキャンプとなる下北沢のコクヨ・サテライト型多目的スペース「n.5(エヌテンゴ)」でトークをお聞きいただけます。WORKSIGHT編集部メンバーとディスカッションできる貴重な機会。奮ってご参加ください!
■日時:
2023年5月10日(水)18:00〜21:00
■TIME TABLE:
18:00-18:30 オープニングトーク(山下正太郎・宮田文久・若林恵)
18:30-19:20 ゲスト:志良堂正史さん(手帳類図書室)
19:20-20:10 ゲスト:永井玲衣さん(哲学者)
20:10-21:00 ゲスト:荒川晋作さん、関川徳之さん(「川」編集部)
■開催方法:
会場観覧(要申込) および インスタライブ配信
■参加費:無料
■会場:
コクヨ・サテライト型多目的スペース「n.5(エヌテンゴ)」
世田谷区北沢2-23-10 ウエストフロント1階(下北沢駅より徒歩4分)
*インスタライブ配信はWORKSIGHT Instagramアカウントにて行います。
■ホスト:
・山下正太郎
・宮田文久
・若林恵
■主催:WORKSIGHT/黒鳥社
*会場観覧をご希望の方は下記peatixページよりお申込みをお願いいたします。
【書籍詳細】
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]19号 フィールドノート 声をきく・書きとめる Field Note』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0925-5
アートディレクション:藤田裕美
発行日:2023年4月27日(木)
発行:コクヨ
発売:学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税