「何を残す」から「なぜ残す」へ:WORKSIGHTプリント版・29号「アーカイブする? Archive?」11月19日刊行【特別ニュースレター】
いよいよ発売を迎えたWORKSIGHTプリント版・29号「アーカイブする? Archive?」。データがあふれる現代における記録と記憶の関係を、「なぜ残すのか」という問いを通して見つめ直す。
Photographs by Hironori Kim
Cover Illustration by Ryu Okubo
週刊のニュースレターを中心に、自律協働社会のゆくえを探ってきたWORKSIGHTは、11月19日(水)にプリント版最新号『WORKSIGHT[ワークサイト]29号 アーカイブする? Archive?』を刊行した。
データがあふれる時代に、わたしたちは何を未来に伝えるべきなのか。今号では、「記録」「保存」「継承」といった行為を、企業・文化・アート・哲学の観点から多面的に見つめ直す。
謎多き世界有数の個人アーカイブ「アーカイブ・オブ・モダン・コンフリクト」に見る“語られざる歴史”の再編集をはじめ、社会学者・岸政彦と考える「コクヨの生活社史」プロジェクト、ヤマハ・川島織物セルコン・ポーラ文化研究所に見る企業アーカイブの現在、建築・デザイン事務所スノヘッタが描く“人と知が出会う風景”としての図書館設計を紹介。さらに、作家・円城塔、人類学者・ティム・インゴルド、漫画家・今日マチ子らによる、記憶と想像、身体と記録のあいだをめぐる思索「アーカイブの哲学」など、多彩な読みものを収録。「何を残すか」ではなく「なぜ残すのか」という問いを通して、記録と記憶の関係をあらためて見つめ直す。
【目次紹介】
◉アーカイブ・オブ・モダン・コンフリクト
矛盾と混沌の実験室
800万点を超える古写真、1000万点を超える古文書やアーティファクト。時空を超えてロンドン某所に集められた「語られざる歴史」の断片は、現在を生きるわたしたちに何を語りかけているのか──蒐集の基準も目的もない。一般公開もしていない。驚異の「反アーカイブ」に潜入。
Photographs by Shinji Otani
Interview & Text by Kei Wakabayashi
◉巻頭言
記憶のマネジメント
文=山下正太郎(本誌編集長)
倉俣史朗のすし店「きよ友」が香港の美術館M+に移された出来事は、文化的遺産が国内で見過ごされてきたことの証左かもしれない。ロンドンのV&Aイーストやロッテルダムのデポが収蔵庫を公開し、企業が自らの歴史を語り直そうとする現在、問われているのは「記録を残すか否か」ではなく、「わたしたちは何を未来に手渡したいのか」である。失われゆく記憶の行方を前に、アーカイブの制度とその政治性を問い直す。
Photographs by Shinji Otani
◉社員の人生は社史になるか
岸政彦と語る、コクヨ「生活社史」という試み
現在、コクヨで「生活社史」という一風変わった社史編纂のプロジェクトが進行している。文房具、オフィス設計など、小売から企業向けまでユーザーとの多様な接点をもつ企業の歴史を、販売店、社員、家族などさまざまなかたちでコクヨと関わってきた個人の人生からまとめ直す試みだ。個人のライフストーリーを集め、それを企業のアーカイブとして編纂するとき、どんなことを考えなければいけないのか。『東京の生活史』をはじめとする「街の生活史」プロジェクトの編者も務め、生活史という学問と手法を社会へとひらくアプローチを続ける京都大学・岸政彦教授を招き、「コクヨの生活社史」編纂室が聞いた。
Photographs by Saki Kudo(WORKSIGHT), Shimpei Hanawa
Interview by Editorial Desk of the KOKUYO Lived Company History
Text by Saki Kudo(WORKSIGHT)
◉企業アーカイブの現在地
仕事は流れ、そしてとどまる
ヤマハ/川島織物セルコン/ポーラ文化研究所
日々の業務は流れ去っていくように見えて、企業の内側には確かに残るものがある。独自の価値観や働き方、そこから生み出されるプロダクトなどといった、企業の記憶。蓄積していく仕事のなかから、それをどう捕まえることができるのだろうか。ユニークな視点から、企業の記憶を捉え、アーカイブとして価値化する3つの企業を訪ねた。
Photographs by Hironori Kim, Shimpei Hamada, POLA Research Institute of Beauty & Culture
Interview by Sho Kobayashi, Emiri Komiya(WORKSIGHT), Kei Wakabayashi
Text by Emiri Komiya(WORKSIGHT), Eishi Homma, Kei Wakabayashi
◉21世紀の図書館のかたち
スノヘッタ・人と知が出会う風景
図書館はもはや記録を保管するだけの場所ではない。オスロで設立され、現在では国際的な建築プロジェクトを数多く手掛けるスノヘッタは、アーカイブを「保存のための保存」から解き放ち、人と知が交わり続ける「生きた」存在として再定義する。2023年末に開館したばかりの北京図書館の設計を通じて描かれるのは、記憶を未来へと更新し続ける、21世紀のアーカイブのモデルケースかもしれない。スノヘッタのアジア統括マネージングディレクターであるリチャード・ウッドへインタビューを行った。
Interview by Shotaro Yamashita, Sho Kobayashi(WORKSIGHT)
Text by Sho Kobayashi(WORKSIGHT)
◉アーカイブの哲学
円城塔/ティム・インゴルド/今日マチ子/小原一真/藤井保文
国家や組織といった大きな歴史を形成するためだけにアーカイブが用いられた時代は終わり、人びとの記憶や声もまた保存の対象となった。公共的な記録と個人的な記憶の間を、現在のアーカイブは揺れ動いている。さまざまな分野の語り手たちが、それぞれの地点からアーカイブのあり方を見つめた。
Illustrations by Ryu Okubo
◉独占か共有か、それが問題だ
情報学者・山田奨治と考えるデジタルアーカイブ
デジタル技術の進歩により、知識や文化はかつてないほど自由にアクセスできるようになった。その一方、世界的に著作権の保護期間が延長傾向にあるなど、権利者による囲い込みも進んでいる。 『著作権は文化を発展させるのか:人権と文化コモンズ』などの著書があり、著作権制度の歴史と運用を分析してきた国際日本文化研究センターの山田奨治教授に取材した。文化の「公共性」を考えるとき、アーカイブはどのように保護され、ひらかれていくべきなのか。
Interview by Sho Kobayashi, Anna Nakai(WORKSIGHT)
Text by Sho Kobayashi(WORKSIGHT)
◉ブックリスト
アーカイブのアーカイブ
文書や声を集めて、取捨選択する。歴史を考証し、ときには偽る。アーカイブには、記録と記憶をめぐる人間の感情が縦横無尽に交錯している。アーカイブに対する語りを通して、わたしたちの欲望を覗き見る本のアーカイブ。
Selected by WORKSIGHT
Image courtesy of Archive of Modern Conflict
◉記憶の時代と感情の共有地
文=武邑光裕
テクノロジーの発展により、わたしたちの記憶はデジタル・アーカイブへと移行した。いま人間が担うのは、アーカイブを検索し、記録され得なかった感情を呼び起こすことなのかもしれない。そんな時代と呼応するように「みんなのきもち」という名のDJユニットが注目を集めている。 「記憶の時代」の新たな文化の姿とは。メディア美学者・武邑光裕による特別寄稿。
Text by Mitsuhiro Takemura
Images selected by Timothy Prus, courtesy of Archive of Modern Conflict
【書籍詳細】
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]29号 アーカイブする? Archive?』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0937-8
アートディレクション:藤田裕美(FUJITA LLC)
発行日:2025年11月10日(月)
発行:コクヨ株式会社
発売:株式会社学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税







