クリエイターと二人三脚で目指すミリオンヒット:講談社・集英社が目指すインディゲームの未来
今年3月に行われたWORKSIGHTのトークセッション「講談社と集英社が描く、インディゲームの未来」。ゲームづくりの民主化が起き、まるで漫画を描いたり音楽をつくったりするようにゲームをつくれるようになったいま、パブリッシャー側はどのような状況に置かれ、何を考えているのか。日本を代表する出版社である講談社、集英社のゲーム事業の中心人物が、ゲームクリエイター支援に対する信念を語った。
Photo by Jens Schlueter/Getty Images
『WORKSIGHT[ワークサイト]22号 ゲームは世界 A-Z World is a Game』の刊行記念イベントとして、コクヨのサテライト型多目的スペース「n.5」で行われたトークセッション「講談社と集英社が描く、インディゲームの未来」。本誌にも登場し、ゲーム市場進出の背景や思いを語ってくれた講談社ゲームクリエイターズラボの片山裕貴さん、集英社ゲームズの森通治さんを迎え、本誌の内容をより深く掘り下げるイベントとなった。ゲーム事業発足までのエピソード、国内外のゲームイベントやパブリッシャーの現状、出版社がゲーム業界にもたらしうる新たな発想、作品の権利関係を含めたクリエイターの保護をめぐる思案など、当日のトークセッションの模様をレポートする。
text by Sayu Hayashida
「ゲームが好き」から始まった
──まずは自己紹介からお願いできますでしょうか。
森 集英社ゲームズの森です。2019年に社内で新規事業開発室ができたのですが、そこへ異動し、ゲーム事業を立ち上げました。集英社ゲームズという会社自体は2022年2月に設立し、2年ほど経ったところです。今回はインディゲームのイベントへご招待いただいておりますし、実際、弊社でも小規模チームへの投資は行っておりますが、我々はインディパブリッシャーという立ち位置ではなく、尖りのある人やアイデアであれば規模などを問わず投資を決定しています。まだまだ実績がない小さな組織ではありますが、よろしくお願いいたします。
片山 講談社ゲームクリエイターズラボの片山です。ゲームクリエイターズラボは、2021年6月1日に発足した新規事業開発部のクリエイターズラボのなかの1プロジェクトなのですが、そもそもは2020年9月に有志によって始まったプロジェクトでした。
──どういうコンテクストのなかで始まったのでしょうか。
片山 出版社には基本的にノンフィクション部門とフィクション部門があり、後者に含まれるもの、すなわち漫画や小説などのコンテンツは、作家と編集者が二人三脚でつくってきた歴史があります。ゲーム業界でも近年、「Unity」「Unreal Engine」といったゲームエンジン、「RPGツクール」などのゲームコンストラクションツールの登場によって、個人での開発が可能になってきた。そういった個人のクリエイターにも担当編集者がいてもいいのではないかと考えたのが始まりですね。
──ゲーム以外の案はありましたか? あくまで例えばの話ですが、陶芸家に担当編集者をつけるということも考えられなくはないのかなと。
片山 陶芸家も案に挙がっていましたよ。
──本当ですか?(笑)。
片山 これまで支援してきたクリエイター以外に、どのようなクリエイターや職人がいるのか考えていたんです。ショートムービーやインディアニメの個人制作者、メタバース系のCGクリエイター、他にも、クラウドファンディングサービス「Kickstarter」とパートナーシップを締結していたときには掃除機の開発者なども広く「クリエイター」と捉え、さまざまな案を出しました。インディゲームが起点というよりは、単に面白い個人のクリエイターがいて、その人がつくっているものがたまたまゲームだったという感覚です。
森 講談社さんのゲーム事業が編集部門から立ち上がった一方で、わたしたちはビジネス的な観点から立ち上がりました。新規事業開発室ができたとき、ライツ事業部(原作のアニメ化や舞台化、商品化などのプロデュースを行う部署)やデジタル事業部(デジタル作品の制作、販売、宣伝などを行う部署)の社員が異動してきたのですが、わたし自身もデジタル事業部からの異動がいきなり決まりました。まさに青天の霹靂。しかも「何をやってもいいよ」と言われて。
──一番怖いやつですね(笑)。
森 好きなものを聞かれたので、「ゲームが好きだからゲーム(に関する新規事業)をやりたい」と話したものの、わたしがゲームを開発できるわけでもない。そこで、約1年間かけて全世界のゲームイベントを巡り、勉強することにしました。
並行して企画も考えました。わたしは「クロノ・トリガー」というゲームが好きなのですが、このゲームのキャラクターデザインは鳥山明さんなんです。だから、作家とゲームをつくりたいという気持ちはありました。
「クロノ・トリガー」Steam公式ページより。 1995年3月11日、スクウェア(当時)から発売されたRPGゲーム。「ドラゴンクエスト」シリーズの堀井雄二氏、「ドラゴンボール」の鳥山明氏、「ファイナルファンタジー」の坂口博信氏がタッグを組んだドリームプロジェクトと謳われ、いまなお多くのファンをもち、不朽の名作といわれている
森 ただ、集英社のIPを使ったゲームをつくるのは大きなハードルがあるんですよ。既存の大手ゲーム開発会社やIPを育ててきた方々との関係性もありますので、社内といえどそう簡単に許諾を預かれるわけではない。どうしたものかなと考えていると、ゲームイベントの会場の一角に人が集まっていたんです。そこがインディゲームのコーナーだった。「これ、どうやって売るの?」と尋ねたら、「投資家を探しているんだ」と言われ、ピッチ(投資家に対して自社の製品を紹介するプレゼンテーション)を受けたんです。こういうゲームで、こういう状況で、これくらいのお金がほしいんだと。
──金額感としてはどれくらいですか?
森 大体数千万円から1億円くらいです。「うちが投資したらゲームの販売権を預けてくれるの?」と尋ねたら、「まさにそのパートナーを探しているんだ」と。ゲーム版のベンチャーキャピタルですよね。集英社としては当然、長い歴史のなかで新人漫画家に投資するということはやってきましたので、親和性もある。役員にこういうビジネスがあると説明したところ快諾してくれて、ゲーム事業を始めるに至りました。
(上)森通治|Michiharu Mori 集英社ゲームズ 執行役員/経営管理・マーケティング統括。2008年、Apple Japan, Inc.入社。教育機関、エンタープライズ市場向けの事業開発・パートナー事業推進を担当。2015年に集英社に入社。デジタル事業部にて、電子コミックの事業推進、プロモーション企画、社内ウェブサービスやマンガアプリのグロース支援、週刊少年ジャンプ50周年企画などを担当。2019年に新規事業開発室の設立に伴い異動。新規事業開発部にてゲーム事業を始め複数の新規事業プロジェクトの立ち上げを経て、集英社ゲームズを設立
(下)片山裕貴|Yuki Katayama 講談社ゲームクリエイターズラボのプロジェクトチーフ。2018年、講談社に入社。第四事業局 クリエイターズラボ所属。「FRIDAY」「月刊少年マガジン」の編集者を経て、現在に至る。ゲームクリエイターズラボが支援するインディゲーム作品の制作状況確認や、 発売スケジュールの進行管理などを行う
「著作権はもたない」という選択
──インディゲームクリエイターを漫画家・作家に限りなく近いものと捉えることもできれば、先ほど「ピッチを受けた」という話もありましたが、スタートアップに近いものと捉えることもできそうです。海外ではどのような状況なのでしょうか。
森 国や人にもよりますが、どちらかというと(ゲームづくりは)デジタルサービス開発に近いように思います。クリエイティブを実現させたあとは、通常のデジタルサービスのように運用やグロースが行われ、そこには資金が必要になる。そこは漫画や音楽よりスタートアップ的なのでピッチも多いのだと思います。
ひとりでゲームをつくれる時代だけれども、商業的な成功ラインなどを考えると、現実的にはひとりでは厳しいことも多い。年単位の制作期間中、開発チーム全員に「霞を食って生きろ」とは言えません。だから投資家を探さないといけない。特にヨーロッパではピッチが多く行われている印象です。
──カンファレンスのようなものが行われるんですか?
森 国や地域によりますが、ゲームイベントとは別に、ピッチイベントが開催されるんです。オーストラリアのメルボルンでは国、自治体、一部の投資家からの資金が投入され、そこに全世界のパブリッシャーが集まり、朝から晩までずっとピッチを受けるというイベントがあります。マレーシアでは講談社さんもいらっしゃってましたね。
片山 わたしたちもクリエイターさんにお声がけさせていただきました。
VicScreenが主催する「Play Now Melbourne」。国内外の主要なパブリッシャー、プラットフォーム・ホルダー、投資家などが参加し、2023年はオーストラリア全土から集まった40以上のプロジェクトがピッチを行った
──日本にもピッチイベントはあるんですか?
森 ゲーム会社のマーベラスさんのプログラム「iGi」(indie Game incubator)ではピッチをやっていますね。わたしたちも今夏、毎年京都で開催されている日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit」と連携し、ピッチイベント「GPB: Connect@BitSummit」を開催する予定です。
──ちなみに、日本にはいまどのくらいのパブリッシャーがあるのでしょうか。
森 国内のパブリッシャーは、大手だとバンダイナムコさん、カプコンさん、セガさん、コナミさん、コーエーテクモさん、スクウェア・エニックスさん、最近はCygamesさん(順不同)もイベントでよくお見かけしますし、中小系のパブリッシャーは我々のような会社が20〜40社、そこに最近はTBSさん、東宝さん、松竹さんなど他業種からの参入も見られるようになってきました。
そのなかにもさらに区分けがあり、パブリッシャー、ディベロッパー、そしてその2つが混ざり合っているところがあります。パブリッシャーは集英社ゲームズ、そして講談社さんもそうですが、スタジオや内製チームをもたないところ。ディベロッパーは内製チームをもち、自社開発はもちろん受託開発もできるところ。その2つが混ざり合っているところにはカプコンさんなどがありますね。
片山 わたしたちがあくまでパブリッシャーであるというのも、出版社ならではの発想だと思います。出版社は、漫画家さんを自社の社員にすることは基本的にはないので。
──つくった作品は自社のものにはならないんですか?
片山 作品自体、つまり著作権は作者のものです。
森 出版社はいわゆる“版“を預かる会社です。この”版”を預かる権利は、ゲームではパブリッシングの権利に当たります。これまでパブリッシャーはゲームの著作権、パブリッシングの権利の両方を買い取るモデルが多かったのですが、わたしたちは基本的にパブリッシングの権利だけを預かります。その代わり、契約内容にもよりますが、友好な関係が続く限りは10年、20年とその権利を預かることができるんです。
片山 作品がアニメ化される際に契約を結び、著作権管理委託という作品の二次展開窓口を出版社が担わせてもらうことが多いです。
森 「著作権を買い取ったほうがいいのではないか」という声もあるのですが、そうしてしまうと、例えば続編の制作がパブリッシャーの都合で厳しいとなったときに、クリエイターは制作を諦めるしかない。そのような経緯のもとに「精神的続編」という間接的な続編がつくられることもあります。それはお互いにとって損だと思いますし、クリエイターが諦めなくてもいい方法があるほうがいい。これは漫画家も同じです。
──この出版社で出せないから別の出版社に行く、という。
片山 出版業界では普通なのですが、ゲーム業界ではあまりない発想みたいですね。
クリエイター側が著作権・商標権を含むIP(知的財産権)などの問題を回避するため、以前の作品と同じテーマや世界観、システムなどをもちながらも、直接の続編ではない作品、いわゆる「精神的続編」をつくることがある。上記動画は「Demon’s Souls」の精神的続編といわれる「Dark Souls」。パブリッシャーであるソニー・インタラクティブエンタテインメントが「Demon's Souls」の諸権利をもっていたため、ディベロッパーであるフロム・ソフトウェアは直接的な続編を制作することができなかった
慰めることも重要な務め
──クリエイターに対してはどれくらいハンズオンしていくのでしょうか。
森 プロジェクトによりますね。任せきりでも問題ないチームに関してはなるべく介入しませんが、締切は設定します。先日、海外のあるチームに「うちが入ったメリットって何?」と聞いたら、「締切ですね」と言われました(笑)。締切がないと、みんなずっとつくっちゃうんですよ。
──そうなんですね。
森 クリエイター側のリクエストで介入する場合もあります。ゲームデザインのディレクションができる人を入れてほしいとか、Unityを使っていたけれどUnreal Engineに切り替えたいので詳しい人を紹介してほしいとか。
片山 我々はあくまで編集者という立場で入るのですが、編集者ができることとして、ディレクションのサポート、プロデュースのサポート、そしてマネージャーとしてのケアの3つがあると思っています。ディレクションはゲーム内容の壁打ち相手、プロデュースはゲームの広め方・売り方。そしてケアは「気分が上がらないから慰めてほしい」と言われて慰めるとかですね(笑)。
──大事ですよ(笑)。
森 制作過程をSNSなどで発信できると、ユーザーからのリアクションもあってモチベーションを保ちやすいけれど、投資している以上それは商品なので、ときには自由に発信できないケースも出てきてしまいます。長いと2〜3年、誰にも見てもらえずにひたすらクリエイティブ活動を続けるのは苦しいじゃないですか。だから「いいじゃん! 最高じゃん!」と励ますマネージャー的な役割は本当に重要なんですよ。
片山 わたしは毎週、クリエイターさんに電話しますね。「どうですか?」と進捗を聞いて、あとは雑談。人によっては毎週来社してもらい、社内で作業をしてもらうことも。そのあとは一緒に食事に行きます。
──そういう編集者としてのノウハウが展開され、シナジーを生み出しているのでしょうか?
森 正直なところ、シナジーというほどのもはないと思います。結局は数を打つことなのではないかと。当たるか当たらないかがわからないなかで、どれだけ打てるかは重要なことですし、ひとつの尖りになる。だから、意識的に数を打つ体制でありたいと考えています。
──ゲームだと規模は変わるかもしれませんが、本は作家、編集者、あとはデザイナーなど、限られた人間しか関わらないわけで、そう考えるとお金をかけてマーケティングする間にどんどん世に出してしまったほうがいいという考え方もありますよね。
片山 まさに、だからこそたくさん投げられる。ゲームクリエイターズラボではいま20以上の作品が動いているんですけれども、20冊の本というより、20件の企画がある1冊の雑誌をつくるような発想なんです。このなかの1作でも当たってくれたら、他のクリエイターにもう一度チャンスが生まれる。出版業界はそうやって生きながらえてきたと思います。作家さんに何度も打席に立ってもらい、挑戦し続けてもらったから。
──そのカルチャーがあるのは強いですよね。メーカーだと、数を打ち続けるという発想はなかなか合意を得られないところもあります。実際、ゲームをつくるのにどれくらいの金額を投資するんですか?
片山 本業として取り組むのかどうかにもよりますが、500~1000万円ほどお渡しします。漫画でいうところの原稿料です。
森 集英社ゲームズでは、最少人数でつくるだけだと3000万円くらいからスタートしているイメージです。ただ、QA(品質保証)やローカライズの費用、我々の人件費も含めると、最低でも6000万円くらいはかかります。規模が大きい企画だと、億単位の投資になることもありますし、いまの我々の投資規模はこの辺りがメインです。
──それは新人漫画家への投資と比べるとどうなんですか?
片山 我々は同じくらいですかね。
森 うちは高いです。役員から「お金かかるねぇ」と言われます(笑)。
搾取構造に陥らないために
──昨今、IPの横展開をめぐる問題が表面化しています。しかし、漫画をひたすら描いてきた個人が、いきなり複雑な権利や契約の話をもちかけられても、自分を守りきれないということは起きると思うんです。ゲームだとまた違うのかもしれませんが、個人をエンパワーすることは同時に、搾取的な構造を生みかねないという事実も、避けがたくあると思っていて。デリケートな話ですが、差し支えなければその辺りの考えをお聞きできればと思います。
森 わたしたちもよく議論するんです。作家に投資する身として、作家性を守るとはどういうことか…… 生活できるお金をきちんとお渡しすること、きちんと理解していただけるまで契約内容を説明するということも含まれると思います。わたしたちは、法律用語をわかりやすいことばに置き換えてまとめたシートを、契約書とは別につくっているんです。あとは弁護士をつけるようアドバイスします。そうしないと、トラブルが発生したときにクリエイター側が不利になってしまうので。
片山 同じく、契約前に内容をしっかりお伝えしますね。我々は個人クリエイターさんと向き合うことが多いので、「弁護士をつけてください」とお願いするのは、金銭的にも心苦しいところがあるのですが……。その分、契約内容については納得できるまで、数字のところも包み隠さず説明します。
森 契約以前の話し合いの段階でも、クリエイターさんの幸せを考えたときに、あえて投資をしないという選択をすることもあります。パブリッシャーがつくとコストも増えてしまうので、ご本人だけだと1万本売れたら十分生活できるのに、パブリッシャーがつくと10万本売らなければいけないということも起きる。果たしてそれはクリエイターさんにとって本当に幸せなことなのだろうかと。
片山 それはありますね。あとは「本当につくりたいものは何だっけ?」という話をすることも。その結果、ゲーム以外のメディアのほうがいいとなっても、それはそのクリエイターさんにとって良いことだと思います。
講談社ゲームクリエイターズラボのYouTubeチャンネル。税理士による確定申告の解説動画も上がっており、個人クリエイターを多角的に支援できるよう努めている
未来のためのミリオンヒット
──事業としてはいま、どのような目標を掲げているのでしょうか?
森 まずは5年以内に単年黒字化すること。3年目に入るのですが、結構見えてきたかなと思います。あとはヒット作を必ず出したい。いまは集英社の子会社として認知されていますが、集英社が「少年ジャンプの『〇〇』の出版社だよね」と言っていただけるように、集英社ゲームズも「『〇〇』のゲーム会社だよね」と言われるようになりたい。数字でいうと、グローバルでミリオンヒットを目指しています。
片山 長期的な目標でいうと、「インディゲームクリエイター」という肩書きが「漫画家」「小説家」などに並ぶような世界を目指しています。そのためにはインディゲームでずっと食べていける人が出てこないといけない。となると、グローバルでゲームがたくさん売れなければいけません。数年以内にミリオンヒットという目標は集英社ゲームズさんと一緒ですね。それがようやく見え始めてきたなと思います。
──業界全体が盛り上がるためには、何が必要だと思いますか? それこそメルボルンのイベントのように、政府機関も参入するなど。
森 業界全体にお金が回ることが重要だと思います。流れ込むお金の総量が増えればチャレンジしようと思う人が増えるので。ただ、完全にファンドだけ、つまりお金を出すだけのところは、個人的には好きじゃないので…… 悩ましいですね。
──それはなぜ?
森 ゲームへの愛がないというか。23兆円という市場規模しか見ていなくて、「日頃ゲームなんてやらない」という投資家もいて。バランスだとは思うんですけどね。
クリエイターを増やすという点では、わたしたちが運営している「ゲームクリエイターズCAMP」では、クリエイターとパブリッシャーをつなぐ「Game Pitch Base」というプラットフォームを運用しています。ここには講談社さんも含め多数のパブリッシャーが参加しています。「集英社ゲームズにとってのメリットがないのでは?」と言われることもあるのですが、長期的に見て、この分野に参入してくれる人が増えることはわたしたちにとってもメリットです。だから一緒に盛り上げてくれるだろうと思うところにお声がけしてきました。
もちろん良いクリエイターが出てきたときは取り合いになるわけですが、そのときに集英社ゲームズが一番良い会社だと、堂々と言えるようになっておくこともひとつの目標です。
片山 パブリッシャー同士の協力は非常に重要なところです。日本もそうなんですが、自国の売上だけでは厳しい国が多い。そういう場合、インディパブリッシャー同士がスクラムを組み、Steamストアのなかで露出枠をとりに行くなどの工夫をする必要があります。そういう協力体制があればクリエイターも増えていくだろうし、市場が隆盛していくのではないかと思いますね。
(上)「年間1000万円差し上げますから、好きなゲームを作りませんか?」というキャッチフレーズで知られる、講談社ゲームクリエイターズラボのインディゲームクリエイター支援プロジェクト。「違う冬のぼくら」をはじめ、さまざまな作品を世に送り出してきた。(下)ゲームクリエイターが集まり、交流し、新しい作品を生み出す、集英社ゲームズのコミュニケーションプラットフォーム「ゲームクリエイターズCAMP」
次週6月4日のニュースレターは、ギンザ・グラフィック・ギャラリーにて個展「NOHIN: The Innovative Printing Company 新しい印刷技術で超色域社会を支えるノーヒンです」を開催中の八木幣二郎さんへのインタビューをお届けします。SF的設定をもつ架空の印刷会社「NOHIN社」などの展示をめぐって、グラフィックデザインの今後、生成AIをめぐる思案などをうかがいます。お楽しみに。
【新刊案内】
photo by Hironori Kim
書籍『WORKSIGHT[ワークサイト]23号 料理と場所 Plates & Places』
どんなにグローバリゼーションが進もうと、料理は「その時/その場所」でしか味わえない。どんなに世界が情報化されようと、「食べること」はバーチャル化できない。料理を味わうという体験は、いつだってローカルでフィジカルだ。歴史化されぬまま日々更新されていく「その時/その場所」の営みを、23の断章から掘り起こす。WORKSIGHT史上、最もお腹がすく特集。
◉エッセイ
#1「サフラジストの台所」山下正太郎
#2「縁側にて」関口涼子
#3「バーガー進化論」ジェイ・リー/ブルックス・ヘッドリー
#4「ハイジのスープ」イスクラ
#5「素晴らしき早餐」門司紀子
#6「トリパス公園の誘惑」岩間香純
#7「パレスチナ、大地の味」サミ・タミミ
#8「砂漠のワイルドスタイル」鷹鳥屋明
#9「ふたりの脱北者」周永河
#10「マニプールの豚」佐々木美佳
#11「ディストピアの味わい」The Water Museum
#12「塀の中の懲りないレシピ」シューリ・ング
#13「慎んで祖業を墜すことなかれ」矢代真也
#14「アジアンサイケ空想」Ardneks
#15「アメイジング・オリエンタル」Go Kurosawa
#16「旅のルーティン」合田真
#17「タコスと経営」溝渕由樹
#18「摩天楼ジャパレス戦記」佐久間裕美子
#19「石炭を舐める」吉田勝信
#20「パーシャとナレシュカ」小原一真
#21「エベレストのジャガイモ」古川不可知
#22「火光三昧の現場へ」野平宗弘
#23「収容所とただのピザ」今日マチ子
◉ブックガイド
料理本で旅する 未知の世界へと誘う33 冊のクックブック
◉表紙イラスト
今日マチ子
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]23号 料理と場所 Plates & Places』
編集:WORKSIGHT編集部(ヨコク研究所+黒鳥社)
ISBN:978-4-7615-0930-9
アートディレクション:藤田裕美
発行日:2024年5月15日(水)
発行:コクヨ
発売:学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税