サウス・ロンドン発、自由と信頼が支えるジャズ・コミュニティ:「Total Refreshment Centre」「Church of Sound」の立ち上げ人は語る
「新しい何か」が生まれ続ける場所は、多くの場合、その実態はことばで説明しづらいものだ。だからこそ、興味は募る。世界的に注目されるサウス・ロンドンのジャズシーンで、特に耳目を集めるふたつのプロジェクト「Total Refreshment Centre」と「Church of Sound」。その立ち上げ人であるレックス・ブロンデル氏に、ミラクルが起きるコミュニティの設計思想についてじっくりと訊ねた。
COSの様子。アーティストを取り囲むような会場設計が特徴だ。photograph courtesy of Church of Sound
ここに来れば、予想もしていなかったミラクルがきっと起きる──。
この数年、音楽好きを唸らせるミュージシャンを続々と生み出しているサウス・ロンドン。このエリアのジャズシーンにおいて、注目されているふたつのプロジェクトがある。ひとつは、コミュニティスペースであり、スタジオであり、ライブスペースでもある「Total Refreshment Centre」。2023年2月、国境や世代を超えてこの場を慕うアーティストたちによる新録音を集め、ブルーノートからリリースされたコンピレーション『Transmissions from Total Refreshment Centre』は、英Guardian紙といった一般メディアのレビューでも高い評価を得るなどさらなる広がりを見せている。
もうひとつのプロジェクトが、教会を会場に開催されるライブシリーズ「Church of Sound」である。ロンドン東部、Saint James the Greatという教会で月2回開催されているというこのシリーズは、次々と才能あふれるミュージシャンを輩出すると同時に、トニー・アレンといったレジェンドも招聘するなど、シーンの中心として機能している。フロアの真ん中に置かれたスピーカータワーをミュージシャンと観客が取り囲むという、ユニークな会場構成でも知られているイベントだ。
このふたつのプロジェクトは、どちらも同じ人物が立ち上げている。それが今回の取材相手、レックス・ブロンデル氏だ。ふたつのプロジェクトは「完全に別」とブロンデル氏は言うが、その根底には好き者同士のコミュニティが、より濃く、より深く築かれ、そのなかで、より新しいものが生み出され続けているという共通点がある。そのマジカルな空間は、どのように生み出され、運営されているのだろうか。ブロンデル氏のコミュニティに対する向き合い方を聞いた。
なおこの秋、トータル・リフレッシュメント・センター界隈のミュージシャンが集って「Temple Expansions」が開催される。築地本願寺を皮切りに、東京・横浜・名古屋・大阪の6会場にて、UKで頭角を現し始めている旬のアーティストと日本のアーティストがコラボレーションを果たす予定だ。ぜひ、現在進行形でうごめく魅力的なシーンの一端を体感してほしい。
interview by Mitsutaka Nagira/Shintaro Kuzuhara
text by Shintaro Kuzuhara
photographs by Lorenzo Dalbosco
cooperation with Kazumi Someya/N.A.S.A. Creative
歴史の始まりは、ミント・キャンディ
──まず気になるのは、トータル・リフレッシュメント・センター(TRC)という名前です。とてもユニークですよね。
実はこれ、お菓子のメーカーの名前なんです。ある日、ガールフレンドと道を歩いていたら、とあるキャンディ・ディスペンサーが目に留まりました。そのなかのミント・キャンディに「トータル・リフレッシュメント・センター」と書いてあったんです。
ちょうど、僕らがやろうとしていることにぴったりでした。「センター」とは、人が集まって、何かをやるための「場」であって、要するに「コミュニティ」のこと。「リフレッシュメント」は「新しいこと」「新鮮なこと」をやりたいという気持ちです。そして「トータル」は「とにかく全力で!」っていう意味。つまり、トータル・リフレッシュメント・センターそのものなんです。
2019年、「New School of Music | 新しい音楽の学校」の取材で訪問したトータル・リフレッシュメント・センター。入り口の扉には、同所の頭文字をとった「TRC」のステンシルが。©︎ Lorenzo Dalbosco
──名前は偶然決まったようですが、TRCの活動も偶然始まったんですか? それともある程度、計画的だったのでしょうか。
2012年、いまのTRCに近い場所で仲間とスタジオを始めたのがTRCのスタートですが、その当時から「同じようなことを考えている人たちが出会う場所、それぞれのプロジェクトについて話し合える場所、そこから何かが生まれ、さらにそれをプロフェッショナルなレベルまで高められるような場所をつくりたい」とずっと思っていました。
例えば、ミュージシャンが出入りする場所に、エンジニアも遊びに来ていて、コーヒーなんか淹れながらふたりで話し込んでいるうちに「じゃあ一緒にやろうよ」という流れになって、そこにさらに「自分はアートワークがやりたい」という人が交わって……。そんな「輪」が広がればいいな、と思っていたんです。お互いが助け合えて、何かが生まれる場をつくりたかった。
場所をつくって最初に声をかけたのは、僕が好んでディグしていたミュージシャンたち。とにかく「あなたたちをすごくリスペクトしているんだ」ということを伝えて、一つ屋根の下で制作もライブもやってもらいました。それがあまりにも楽しそうだったからだろうけど(笑)、口コミでどんどん何かをやりたいって人が増えていったんですよ。例えば「フェスをやらないか?」という話をもち込んできてくれる人もいました。そうした流れのなかで、僕自身の視野もどんどん広がっていった。みんながTRCの世界を広げてくれたんです。
それに、若くて面白いプロデューサーやミュージシャンに積極的に場を与えようとする人はあんまり多くないんです。だから、その場を盛り上げていれば自然とひとり、またひとりと新しい人がやって来ます。それに、ひとり知り合いができると、そこから芋づる式に新しい人につながっていく。一度知り合った人とはその後も連絡を取り合って、常に次の機会をつくるようにもしています。そういった交流から、だんだん、新しいジャズの「シーン」のようなものが生まれていったんだと思います。
(上)フォトグラファー/映像作家のファブリス・ブルジェル氏。シカゴのレコードレーベル「International Anthem」とTRCがコラボレーションした作品『Where We Come From (CHICAGOxLONDON Mixtape)』のアートワークには、TRCの天井の写真が使われている。©︎ Lorenzo Dalbosco (下)同作品のドキュメンタリー。International Anthemのマカヤ・マクレイヴン氏がニューアルバムのためにロンドンを訪れ、TRCで演奏した様子が映し出されている
機動性のある自由
──集まった人たちの交流を促進するような工夫はあるのでしょうか。
TRCには「ブレイクアウト・スペース」という共有の場所があって、そこに行けば誰かがいて、気軽な話も、深刻な悩み相談も、ランチもできます。自分のスタジオにひとりでこもりきりになったりはしないんです。こうした共有スペースが、交流を促進したと思います。例えばギグが終わった後の深夜、開いているレストランはなかなかないですが、TRCなら開いてる。話もできるし、音を出してジャムもできる。そこで次の作品の話になるかもしれません。
TRCの建物のなかにあるそれぞれの機能が密度高くまとまっていることも、話がまとまりやすい理由であり利点だと思います。ギグができるスペースのすぐ隣にリハーサル室があって、そこでリハーサルをやっていたバンドが、機材をそのままギグ・スペースにもち込んでお客さんの前で演奏できる。そういった身軽な行動を、僕からも奨励しています。時にそれはクレイジーでマッドネスなことにもなりえるけど、いいアイディアなら「いいじゃん、やっちゃおうよ!」って僕も盛り上がっちゃう。機動性のある自由、これがTRC、自分たちの特性です。こんなマジックが発生する場所っていうのは、世界的にも珍しいと思いますよ。TRCが始まって11年になりますが、やっていることは最初から変わっていません。
TRCの収録スタジオ。©︎ Lorenzo Dalbosco
──TRCは他に類を見ない特殊な場所だと思うんですが、TRCのモデルになった場所、インスピレーションを与えてくれた場所はあるんでしょうか。
うーん、モデルにした場所はありませんが、昔から、コマーシャルな施設よりも、スクワットに出入りしていました。ロンドン中心地の古い印刷工場だった建物をつくり変えた場所には、レゲエのサウンドシステムが山積みになっていたり、映画館だったところで映画を観ることができたり、あるいはバーだった場所は当時の雰囲気がそのまま残っていたり……。そんな建物のなかで、皆が好きなようにやっている、そういう場所が自分にとっては刺激になりました。やっていることは展覧会であったり、コンサートであったり、人それぞれでしたけど、みんなプロダクティブなんです。集まってドラッグをやるとか悪さをするというよりは、それぞれが協力して何かをやっていこうとする場所でした。
具体的に何かを目指していたというよりは、スクワットのような、オーガニックに物事が生まれていく、そういう場所がインスピレーションになっています。
TRCのコミュニティで活躍するアーティストによる新録音を集めたコンピレーション『Transmissions from Total Refresh Centre』より、Visions featuring Kieron Boothe「Soccer96」。2023年7月発売
高いクオリティから生まれる「信用」
──オーガニックに生まれたつながりからスタートしたとのことですが、いまやTRCの名前は世界中のジャズシーンに知れ渡っていますよね。小さいコミュニティが、とても大きなつながりを生むことができているのは、いったいなぜなのでしょうか。
とにかく「質」にこだわっています。この場所をやっている僕が何よりも音楽のファンであり、音楽のコンシューマーでもあるんです。その視点から、ミュージシャンの人選はもちろんですが、機材や環境、音楽のテイスト、ビジュアルの見せ方、参加している人たちの名前も含めて、きちんと選んで良いものを出す。そのために、あらゆることを最大限にケアして、良いものをつくり続けてきたことは大きかったと思います。
海外の人たちが「UKで何かやってみたい、どこがいいだろう?」と思ったときに、TRCなら機材もあってスペースもあって、レコーディングもライブもできる。一緒にやりたい人を探していれば、僕たちが過去に共演した人たちに声をかけて招集することも可能です。
こうした質が担保されていたからこそ、ラジオのホストの人たちも、UKジャズシーンの注目すべき場所としてTRCを気にかけてくれました。「信用」みたいなものが、クオリティからつくられていったと感じます。
でも実は2016年に、音がうるさいと近所からクレームが来て、それからはもうここでギグができなくなってしまったんですよ。そのとき、教会でオルガンを弾いていた友達と「教会でやればいいんじゃないか」という話になってスタートしたのが、「チャーチ・オブ・サウンド(COS)」でした。
ちょうど新しくてエキサイティングな連中がUKのシーンに出てきたタイミングだったので、カバー曲をやるとか、僕らのレコードのコレクションからマテリアルを引っ張って来たりしながら、COSの企画が始まりました。
──クオリティへのこだわりは、COSでも追求しているんでしょうか。
COSでも、サウンドから照明、提供する食べ物まで本当にすべてこだわっています。
まず会場は円形になっていて、その真ん中にトーテムポールのようにタワー状に立てたスピーカーがあって、音が360度行き渡る仕組みになっています。それを取り囲むように来場者はライブを見ます。ステージと客席の高さも同じなので、ミュージシャンと来場者の距離がとても近く、親密感があります。見る場所によって、ライブの見え方も、ミュージシャンとの近さも違うので、そこも面白いと思いますよ。来るたびに違う体験ができる。
楽しみ方もいろいろで、だいたい19時半にオープンして、ライブは21時からスタートするんですが、その間は、食事をしたり、話をしたりする時間。新しい知り合いもその時間でできます。ライブだけでなく、この時間を楽しむ人も多いんですよ。
人と出会って、話をして、さらに似たような考えの人たちが集まってきて、楽しむ。こういうことを大事にしている人ばかり集まるから、コミュニティ的なバイブスがあります。お客さんだった人がスタッフになる場合もあるし、結果的にお客さんとスタッフが全員顔見知りだったりもします(笑)。
働いている人たちも、ドアに立って入場の整理する人、チケットをもぎる人、エンジニアに至るまで、スタッフ全員がそこでイベントをやることを大事に考えている。この場所が大好きだからやっているという人たちばかりなんです。
この秋、日本で開催される「Temple Expansions」。2023年9月22日の会場・ 築地本願寺を皮切りに計6会場で開催する。Warp Recordsからデビューアルバムを発表した、新たなUKサウンドを提唱する若き才能Wu-Lu。イギリス在住で、UK、サウス・ロンドンの〈リズム・セクション・インターナショナル〉からアルバムをリリースし現行のUK Jazz界に参入を果たした、オーストラリア・メルボルンのポスト・ハイエイタス・カイヨーテとして注目される30/70よりAllysha Joy。コメット・イズ・カミングの原型であり、ジャイルス・ピーターソンのサポートも受けるシンセ&ドラムユニットSoccer96などが出演する。
コミュニティが支えるコミュニティ
──COSは毎回、来場者も多くて盛況だし、シーンへの影響力も大きいイベントですよね。ロンドンのコミュニティやシーンにどんな波及効果をもたらしていると思いますか?
うーん……まず来場者には、素晴らしい音楽を聴けるという点において貢献できていると思います。まだ大きなフェスに出演していないような若いミュージシャンには、キャリアの早い段階できちんとしたお金をもらってパフォーマンスできる場所を用意できました。
そして来場者はもちろん、この業界で働いてる人びとにも、未知のものをどんどん紹介してきました。僕らは、自分たちが好きなものしか追いかけません。他の人がどういうことをやっているのか、あまり知らないし、他の誰かがすでにやっていることはやりたいと思わない。
その結果として、女性のミュージシャンが多くなるなどしたことで、ダイバーシティ的な側面においても貢献できていると思います。COSが影響力をもてる段階にまで成長し、いままで注目されてこなかった顔ぶれを、幅広く世の中に紹介できているんです。
この間も、カリフォルニアから来た2組のミュージシャンがギグをやったんですが、そもそもふたりはどういう知り合いかというと「いや、知り合いじゃないよ。今回初めて一緒にやるんだ。でもおたくのキュレーションなら信頼できるから一緒にやることにした」と言ってくれていたんですよ。ミュージシャンだけでなく、来場者も、僕たちを信頼してくれています。
純然たる信頼と愛情で僕らは成り立っているんです。これはすごいことだと思うし、有名だろうが有名じゃなかろうが、その基準としてもっているのは、自分たちがその人たちを、敬意をもって尊敬できるかどうか、まず自分たちが(ギグを)見たいかどうか、それだけです。だから自分たちの好きな人たちだけをブッキングしています。
──TRCもCOSも「好きな人たちが集まってきて、好きなことをやっていける」場所でありコミュニティだと思います。そのなかで、自由と安全を確保するための思想やデザインはありますか。
特別なルールみたいなものは決めていません。たまには皆の分のコーヒー代を払う、とかはありますが(笑)。それなのになぜ成り立つかといえば、皆が知り合いだからだと思います。参加している人たちが、お互いにリスペクトし合える人しかいない。
──人のつながりが大事だという話には納得するのですが、とはいえ、人がつながることで、やっかいなことも生まれますよね。そういったことを乗り越えて、コミュニティに良いバイブスを生み出すにはどうしたらいいと思いますか。
似たような考えの人が集まるとはいえ、揉めることがないかと聞かれれば、あります(笑)。イベントとしてそれなりに人数が集まる時間は4~5時間くらいでそれほど長くないので、取り立てて大きなトラブルになってしまったことは、僕の知る限りではありません。ただ、もっと長い時間一緒にいるとすると、トラブルも起こりうるでしょう。
この質問に関連して思い出したのは、長いこと深夜のクラブでイベントを主催し続けている先輩たちが言っていたことです。
「セキュリティはトラブルを起こした後にしか対応できないから、未然にコミュニティのトラブルを防ぐことはできない。でも、昔からその場所にいて、踊ったりライブを見たり、本当に楽しんでる人であれば、おかしな奴はすぐにわかる。
コミュニティがある場所であるなら、それがどんなに大きくなっても、昔からその場所に来ていて本当に大事にしている人がいるだろう。そういう人たちによって、トラブルは未然に防げる」
という話で、これは実際にあることなんです。自分が実際にイベントやコミュニティ運営をやるようになって、確かにその通りだなと、より思うようになりました。
その場所を本当に大事にしたいと思っている人たちの思いによってコミュニティが支えられてるんだと僕は思う。コミュニティがコミュニティを支えてるということでしょうか。
©︎ Lorenzo Dalbosco
次週9月19日は、「RadicalxChange Foundation」プレジデントのマット・プルーウィット氏による、地域通貨の可能性についての論考を邦訳してお届けします。グローバル市場における価格決定のロジックによって、購入者にとって有意義な情報が反映されず、普遍的なものになりすぎてしまった「お金」。市場の広大さと個人の関心領域の隔たりという課題から、コミュニティの共有資産となりうる地域通貨について考えます。お楽しみに。
【WORKSIGHTのイベント情報】
© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride–2022
映画『アダマン号に乗って』上映会&アフタートーク
『WORKSIGHT[ワークサイト]20号 記憶と認知症 Memory/Dementia』の刊行を記念し、同書で取り上げた映画『アダマン号に乗って』の上映イベントを9月29日(金)に開催いたします。
本誌の巻頭企画「記憶をめぐる旅の省察」にて取り上げた、フランス・セーヌ川に浮かぶデイケアセンター「アダマン号」。精神疾患と向き合う入居者の日常を、現代ドキュメンタリーの名匠ニコラ・フィリベール監督が優しい眼差しで映し出した映画『アダマン号に乗って』は、第73回ベルリン国際映画祭にて金熊賞を受賞したほか、世界各国で絶賛されています。
イベントでは同作の上映後、アダマン号の取材に同行したWORKSIGHTコンテンツ・ディレクターの若林恵が登壇。参加者の皆様の感想をうかがいつつ、実際にアダマン号を見学したときの印象、本誌未掲載の取材の裏話、また、今後求められるケアの形について考えたことなどをお話しします。
皆様のご参加をお待ちしております。
■日時
2023年9月29日(金)19:00 - 22:00
■タイムテーブル
18:30 - 開場・受付開始
19:00 - 20:50 映画『アダマン号に乗って』上映(109分)
20:50 - 22:00 アフタートーク
■アフタートーク登壇者
若林恵(WORKSIGHTコンテンツ・ディレクター)
宮田文久(WORKSIGHTシニア・エディター)
■開催場所
ツバメスタジオ/Tsubame Studio 3階(東京都中央区日本橋小伝馬町13-2)
■参加費
入場券:1,500円(税込)
書籍付き入場券:2,980円(税込)
■定員
30名
■主催
WORKSIGHT/黒鳥社
■協力
ロングライド
書籍『WORKSIGHT[ワークサイト]20号 記憶と認知症 Memory/Dementia』
わたしたちは他者と記憶を共有している。だからこそ集団のなかで大きな物語を描くことができ、他者から自分であることを認められ、自らの生活を営むことができている。認知症をもつ人を抱えた高齢化社会、国家や地域社会の衰退による集合的記憶の喪失など、「記憶の共有」をめぐる社会問題が浮上しつつあるいま、オランダとフランスでオルタナティブな社会実践を試みる、認知症や精神疾患のケアの現場等を本誌編集長が取材。約90頁にわたる取材旅行の省察と見聞録のほか、ルネサンス期の情報爆発と記憶術を研究する桑木野幸司氏、レバノン内戦の都市の記憶とその傷跡をテーマに音楽作品を制作したベイルートの音楽家・建築史家メイサ・ジャラッド氏へのインタビュー、記憶をめぐるブックガイドを収録。記憶と認知症を手がかりに、来るべき社会のための態度や今日的な問いについて思索する。
■書籍詳細
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]20号 記憶と認知症 Memory/Dementia』
編集:WORKSIGHT編集部
ISBN:978-4-7615-0926-2
アートディレクション:藤田裕美
発行日:2023年8月25日(金)
発行:コクヨ
発売:学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税