「食」というメディアが映し出す歴史とローカリティ:インドネシア発「バクダパン・フード・スタディ・グループ」が問う食と倫理
「食」をめぐる展示、あるいは「食」をめぐるワークショップの一般的なイメージを鮮やかに裏切り、戦中の植民地支配から現在に至る「食」の歴史性やローカリティを考えさせるプロジェクトが、山口情報芸術センター[YCAM]で進行中だ。「The Flavour of Power─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」展および関連イベントに立ち会った編集スタッフによるレポートをお届けする。
YCAMバイオ・リサーチが建築系プログラマーの堀川淳一郎氏と共同制作した「Rice Breeds Chronicle」。イネの品種ごとの特徴と形状が実寸大で表示され、まさに過去から現在に至るクロニクルとして観客に伝わる
2021年度から山口情報芸術センター[YCAM](以下、YCAM)は、インドネシアを拠点に「食」にまつわる活動を行うアート・コレクティブ「バクダパン・フード・スタディ・グループ」(以下、バクダパン)をコラボレーターに迎え、3年という期間にわたる「食と倫理リサーチ・プロジェクト」に取り組んでいる。「食」というメディアに着目する本プロジェクト、その2年目となる2022年度末から、活動の一環として行われている展示「The Flavour of Power─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」と、関連イベントとして実施されたワークショップの様子をお伝えする。
photographs by Kosuke Shiomi
courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
text by Kakeru Asano
食への編集的なアプローチ
「食と倫理」というキーワードから、何を想像するだろうか。人類が生活するために他の生物を犠牲にしない食生活や、グローバリゼーションのなかでの不均衡性、あるいは昆虫食、果てはゲノム編集された食材や3Dプリントフードのような科学技術や高度なカスタマイゼーションがもたらす食の未来──。限りなく想像が広がる「食と倫理」をめぐって斬新な試みが行われていると聞き、2023年3月中旬に筆者は山口県へと向かった。
YCAMでは、コラボレーターにバクダパンを迎えた「食と倫理リサーチ・プロジェクト」の一環として、3月11日から6月25日にわたって展示「The Flavour of Power─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」を開催している。日本政府に植民地支配されていたインドネシアの歴史的事実を参照しつつ、その時代における農業政策にまつわる出来事を解き明かしながら、メディアとしての「食」に焦点を当てた展示がなされている。
「食」ということばから連想される領域は、広大だ。どのようにリサーチ・プロジェクトとして、あるいは展示として成立しうる可能性を見いだしたのだろうか。YCAMのキュレーターであり、アート・コレクティブ「ルアンルパ(ruangrupa)」のメンバーでもあるレオナルド・バルトロメウス氏、YCAMバイオ・リサーチのメンバー、そして8名のメンバーを擁するバクダパンよりスワスティアストゥ・モニカ氏、プトゥリ・シルフィーナ氏、シルバー・ウィカ・エスティ氏、エリエスタ・ハンディティヤ氏の4名に話を聞いた。
まずはYCAM側がプロジェクトを立ち上げていった経緯について、レオナルド・バルトロメウス氏が、「一般的に展覧会はキュレーターが主軸となって企画をするものですが」と語り出した。「2020年、YCAMでは多くのスタッフと展開に向けたオープンな議論を行いました。そこで『食と倫理』というテーマがYCAMのインハウスのグラフィックデザイナーである高原歩美さんから提案されました。非常に広大なテーマであるからこそ、特定のトピックや芸術表現にとどまらない芸術表現として『食と倫理』がどのような意味をもちうるのか、さらに議論を重ねたんです」
その結果として、「災害、バイオテクノロジー、倫理、そしてサステイナビリティの観点から『食』を捉え直す3年間のリサーチ・プロジェクト」の実施が決まったという。「そこからコラボレーターとしてアーティストを選考する際に、わたしが2017年にジャカルタで手掛けた食に関連する企画の際につくったアーティスト・リストを活用したんです」
インドネシアのアート・コレクティブ「ルアンルパ」は、インドネシアのメディアアートのフェスティバルOK. Videoを2003年から手掛けている。2017年にはOK. Pangan(英語ではFoodの意味)というアジアの文脈における食にまつわる政策や状況を省察するさまざまな映像を集めた展覧会を開催し、出展アーティストのなかにバクダパンも名を連ねていた。
2015年に結成されたバクダパンは、アーティストや研究者、ジャーナリストなど異なる専門性をもつ8人の女性メンバーだけで構成され、政治、社会、ジェンダーなど、社会的な課題を議論するメディアとして「食」にまつわる取り組みを行っている(YCAMのウェブサイトでは、彼女たちは食に関して「お腹を満たすものとしてだけでなく、料理をはじめ、政治、社会、ジェンダー、経済、哲学、芸術、文化など、より幅広い問題について語るための道具にもなり得ると考えている」と紹介されている)。テクノロジードリブンなメディアアート作品とは一線を画した編集的なアプローチが評価され、今回のプロジェクトでも、「食と倫理」の問題について多様な視点で議論することを期待して声をかけたとレオナルド・バルトロメウス氏は話す。
バクダパン・フード・スタディ・グループのメンバー。左から、ガタリ・スーリヤ・クスマ、シルバー・ウィカ・エスティ、ヌルビスタ・エリア、エリエスタ・ハンディティヤ、ハイルンニサ、スワスティアストゥ・モニカ、メイヴィ・アンドリアーニ・ララサティ、プトゥリ・シルフィーナ(敬称略) Courtesy of Bakudapan Food Study Group
取材当日に対応してくれたバクダパンのメンバーたち。左奥からプトゥリ・シルフィーナ氏、エリエスタ・ハンディティヤ氏、シルバー・ウィカ・エスティ氏、スワスティアストゥ・モニカ氏
では、日本・山口という土地に呼ばれることとなったバクダパンの側は、どのように考えていたのだろうか。メンバーのひとり、スワスティアストゥ・モニカ氏はこう語った。
「わたしたちバクダパンは、『食』にまつわるアート・コレクティブです。インドネシア国内だけでなくパリで活動するメンバーもおり、分散型で活動をしています。コレクティブなので誰がリーダーといったことはなく、面白いアイデアやテーマをもち寄ってプロジェクトに取り組んできました。今回のYCAMでのリサーチ・プロジェクトは、もちろんレオナルド・バルトロメウスさんとのつながりもありつつ、食べるという行為そのものではなく『食』の背景にフォーカスするという方向性が、社会や政治の問題を捉えるバクダパンのそれまでと活動と通ずるものがあったので、参加を決めました。わたしたちはパフォーマンスやインスタレーションなどの芸術表現から、料理や家庭菜園といった日常生活における実践にアプローチする、新たな方法や形態の実験に関心があります」
植民地時代のイネと、現在の食卓
YCAMが手掛ける「食と倫理リサーチ・プロジェクト」の初年度である2021年度は、「食」にまつわるアーティストとして岩間朝子氏やバクダパンとリサーチを重ね、山口で活動する料理人や食料生産者、生活者などのインタビューを映像展示としてまとめた。2022年度には、バクダパンが文献など食に関するアーカイブをリサーチしつつ、市内でフィールドリサーチを行っている。
バクダパンは普段から文献調査をアプローチのひとつとしているが、今回、山口とインドネシアの関係を探るなかで実施した文献調査から、近代インドネシアの食糧政策の成り立ち、特に植民地支配をされてきた戦時下に注目したそうだ。1942年から1945年にわたる日本軍による統治下時代のインドネシアでは、さまざまなプロパガンダのもと政策が実施されていたことがわかったのだった。メンバーであるエリエスタ・ハンディティヤ氏は言う。
「当時のインドネシアで発行された『ジャワ・バル』という雑誌を見ると、日本軍によるプロパガンダとして『農業に従事することは美しい』とか『労働は幸せだ』というフレーズが多数出てきます。農家のみなさんありがとうという詞の歌もあるなど、国民の動員がかけられていたこともわかりました。オランダ統治時代に比べて(文献にあたるバクダパン側にとって)言語の壁もあり、わたしたちが読み解くことのできる日本軍による植民地支配時代の文献は数少ないなか、東南アジア社会史の研究者である倉沢愛子さんの論文には、軍部にいながらも農業に従事した方などのインタビューが掲載されており、当時の社会を知る手掛かりとして非常に重要なものでした」
さらに、バクダパンは山口でのフィールドワークを通じて、戦時下の日本政府による食糧政策と植民地支配の関係を考える上での重要な手掛かりを得た。主食の米が不足した日本は、ジャポニカ米と台湾在来種を交雑して台湾の気候風土に合うよう品種改良し、大規模な農業政策を行った。台湾で栽培された米は「蓬莱米(ホウライマイ)」と呼ばれ、開発に従事した農学者・育種学者の磯永吉は「台湾蓬莱米の父」と評される。
しかしその一方で蓬莱米は肥料依存性が高く、日本の栽培技術に依存する品種、台湾が日本軍に植民地支配されていた象徴だという批判も少なくはないそうだ。さらに日本軍が植民地を拡大するなかで、蓬莱米とインドネシア米を掛け合わせた品種が新たに開発され、生育が早く収穫量も多いため東南アジア一体で広く普及した過去もある。「山口のリサーチから帰ってきて西ジャワで同じような田園風景を見たときに、レガシー(植民地時代の負の遺産)に気がついた」とプトゥリ・シルフィーナ氏が話すように、日本軍による緊急食糧対策はインドネシアの食文化やランドスケープすらも大きく変容させたのだ。
こうしてイネが戦時下に品種改良されていった歴史を批評的に表現したいと、YCAMバイオ・リサーチの津田和俊氏らは相談を受けた。バイオラボを併設するという世界的に稀有な文化施設であるYCAM。現在バイオテクノロジーの世界は個人でも実験機器などの設備投資や調査・解析ができるほど低コストになっていることや、科学コミュニケーションの観点からも、来館者や地域の方にも受け入れられやすい企画や表現を手掛けてきたという。今回のプロジェクトに際しても、バイオテクノロジーの側から考えることがあったようだ。津田氏が振り返る。
「藤原辰史さんの著書『稲の大東亜共栄圏:帝国日本の〈緑の革命〉』(吉川弘文館、2012年)には、戦時下の日本が蓬莱米の品種改良と植民地での増産を推進した歴史が描かれていました。その歴史的な経緯や、現在にもつながるような複雑な背景をもつ『食』にまつわる政策を再認識したいと思ったのです。イネの品種改良の歴史をバイオテクノロジーの観点から振り返りながら、その影響と可能性を広く投げかけるような表現方法を模索しました」
2022年度の「食と倫理リサーチ・プロジェクト」は、これらのリサーチの成果を編集的にまとめ、展覧会「The Flavour of Power─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」としてYCAM スタジオBで展開されている。
オランダと日本による植民地支配や食糧政策などが現在の食糧システムに与える影響を、スペキュラティブ(思弁的)な物語として問いかける映像インスタレーション「Along the Archival Grain」
農業政策の複雑な利害・緊張関係を体感できるボードゲーム「The Hunger Tales」は、今回の展示に合わせてプレイブックやカードをすべて日本語に翻訳し、誰でも参加できるようになった
本展示は、大きく分けると、2つの空間と4つの展示で構成されている。大階段を上った両側にあるひとつめの空間には、これまでバクダパンが手掛けた過去の展示のほか、ロールプレイを促すボードゲーム「The Hunger Tales」の日本語版を、誰もが参加できるかたちで設置してある。言わずもがな、農業政策は多様な利害関係者らの緊張関係のなかで実施されており、あらゆる課題とその解決は異なる立場のメリット・デメリットを含みつつ成り立つ。ボードゲームの参加者は〈農家・卸売業者・市長〉などそれぞれの立場で政策決定に関与していく。普段は消費者であるわたしたちが、無意識に受け入れざるを得ない社会状況や仕組みを理解することができる。
続いて奥の展示室へ入ると、今回のリサーチ・プロジェクトをまとめた3つの作品が展示されている。「Along the Archival Grain」(映像インスタレーションと同タイトルの別作品)は、「まるで米粒を拾い集めるようだった」とバクダパンが表現するように、彼女らが調査したさまざまかつ膨大な量の文献や調査アーカイブが編集され、テキストと画像によって再構成されている。鑑賞者は、備え付けのタブレットで探索的に閲覧することができる。
当時の雑誌などからイメージをブリコラージュしたグラフィックが貼り出された壁面の先に展示されているのは、YCAMバイオ・リサーチが手掛ける「Rice Breeds Chronicle」。イネが品種改良された歴史的背景を映像で表現。イネの品種ごとの形状をパラメトリックデザインで実寸大で再現し、その品種改良の背景や、作物としての特徴を紹介している。
食糧政策とバイオテクノロジーの密接な関係を想像した後は、日本が植民地支配を拡大していた当時の映像や音声、追加で描かれたイラストなどが編み込まれた映像インスタレーションの「Along the Archival Grain」だ。眺めていると、天井から紙が舞い落ちてきた。よく見ると「開発の傷の中で喜べ!/BERBAHAGILAH DALAM LOEK PEMBANGOENAN! 」と書かれている。天井付近に備え付けられたプリンターからビラが定期的に印刷され舞い落ちてくる様からは、まさに文化的同化政策を想起させられる。
これらの展示を見ていた筆者の頭には、食糧政策における負の側面にばかり焦点を当てていないだろうかと、ふと疑問がよぎった。当時の軍事技術が一般化され、今日のわたしたちの生活を支えている事実を直視せざるを得ないように、当時行われた政策が、インドネシアの農業にもたらしたメリットはなかったのだろうか。植民地支配した側とされた側の国民であるというわたしたちの関係性を顧みつつも、あえて率直にバクダパンに尋ねてみると、ひと呼吸おいてから、エリエスタ・ハンディティヤ氏は思いを口にした。
「実は同様の質問をリサーチ中に何度か聞かれました。オランダ統治時代には鉄道や水路などの整備がなされたり、日本統治時代には農家の生産量が増えたり、という功績はありますが、同時にインドネシア固有の風景や文化もまた失われているのです。わたしたちは、戦時下という複雑な状況の社会においてなされたことについて、どちらが良いか悪いかという結論を出すことを望んでいるわけではありません。現在のわたしたちが置かれるこの状況は植民地支配という現象の結果として起きているのだということを理解してもらいたいのです。そして、強大な一国や企業に支配されるコロニアリズムが与える意味を考える機会になることを望んでいます」
野草採取、DNA抽出、ローカリティ
展示で描かれた「食と倫理」にまつわる緊張関係を別の角度から体感する関連イベントとして、バクダパンによる野草採取・調理を行う企画「プリーズ・イート・ワイルドリー」とYCAMバイオ・リサーチによるDNA解析を組み合わせたワークショップが行われた。バクダパンは食にまつわるコロニアリズムを批判的に乗り越えるアクションとして、地域固有の食文化や野草をはじめとした食材の記録や普及を各地で行っているそうだ。
野草の採取から調理をしての実食、さらに取得した野草のDNA抽出までがセットになったワークショップ。食べられる野草の採取と同時に、DNAを調べてみたいと思う植物も採取するという。一般参加者に交じって筆者も同行した。地元の高校生から、筆者のように遠方からの人まで、10名程度の参加者が集まっていた。YCAMから目的地までバスに揺られる20分ほどの道中でスワスティアストゥ・モニカ氏がワークショップを始めた背景を教えてくれた。
「わたしたちはジョグジャカルタやジャカルタという都市部で暮らしているため、昔ながらの野草に関する知識とは無縁な生活を送っていましたが、2016年にインドネシア国内の政治状況を背景にして地方の食糧問題について考える機会がありました。村のなかに生えている草木を観察し、どのような野草や調理法があるか調べ、昔の記憶などを語ってもらって記録するようになったんです。いまでは各地で同様のワークショップを行い、ジャーナルとして発行し、わたしたちの支援者と共有しています。すでに山口でもリサーチ・プロジェクトの一環として取り組んでいますが、今日は参加者のみなさんと記憶を共有できればと思います」
山間の目的地に到着すると、大工であり、野草に造詣の深い岩光大祐氏が参加者を迎えてくれた(野生のサルも)。経験豊かな岩光氏のアドバイスを聞きながら、バクダパンのメンバーと参加者らが、食用の野草を自ら摘んでいく。すでに2022年10月のフィールドリサーチで野草採取を行ったバクダパンのメンバーは、「これは生でいけた?」「火を通すやつ?」と岩光氏に確認をしながら、参加者とともにスイバやギシギシ、アザミなどを採取していく。YCAMに戻って観察した後、みなでおいしく食した。
葉の形からスイバかギシギシかを見分ける岩光氏。スイバの葉は矢じり形だそうだ
山口の里山の野草と向かい合う、ワークショップ参加者とバクダパンのメンバーたち
90分程度の野草採取フィールドワークを終えてYCAMに戻ってきた一行は、野草を改めて観察。匂いを嗅いだり、齧ったりしながら感想を述べ合った。昼食に合わせて野草は洗浄(一部は加熱処理)した上で、生春巻きやサラダにして振る舞われた。インドネシアの伝統料理に熱心なスワスティアストゥ・モニカ氏がつくって持参したピーナッツソースや、岩光氏がおすすめの食べ方と紹介した味噌汁など、どれも好評で、摘まれた野草はあっという間に卓上からなくなった
DNA抽出ワークショップの一場面。ひとりの参加者を除いて、マイクロピペットを触ることすら初めての人がほとんどだった
DNAの相同性検索プログラム「BLAST」のウェブサイトより。参加者の手元に届く塩基配列データを検索すれば、自分たちが採取したものと類似した植物を知ることができる Screen capture by Kakeru Asano
しかし、わたしたちが目にした野草は、ずっとその地域にあったものなのだろうか。なにかのタイミングで他所からもち込まれ、自然交配して居着いてしまったものである可能性はないのか。そうしたことを、DNA解析からも読み解くことができるそうだ。
昼休憩を挟んだのちに、YCAMバイオ・リサーチのメンバーによる指導のもと、野草のDNA抽出ワークショップが開かれた。参加者自身の手によるDNA抽出液は、その後YCAMでPCRなどの後工程を経てからDNA解析受託サービスに送られ、そのDNA溶液から塩基配列が解析される。後日送られてくるテキストデータ(塩基配列データ)を相同性検索プログラム「BLAST」で検索することで、類似する塩基配列をもつ植物が表示される。ローカリティの象徴のように見える野草を科学的に観察し、みなで発展的に捉えることが可能になっているのだ。
「食と倫理」の歴史=未来
食と倫理リサーチ・プロジェクトによる本展示と関連ワークショップは、わたしたちが目にする風景が果たして固有のものか、過去の負の遺産なのかを問いかけてくるようだ。それは日本軍に植民地支配を受けたインドネシア人に限った話ではなく、戦時下に動員された日本人も同じだろうと、スワスティアストゥ・モニカ氏は自分たちの今後の展開を見据えつつ語った。
「『この世界の片隅に』の映画鑑賞とトークイベントで、片渕須直監督とお話しする機会がありました。彼は映画をつくる際に当時の日本の様子をつぶさに調べていらして、当時の日本政府が政策を実現するため日本国民に対して動員をかけていたことについてお話がありました。日本軍による食糧政策のレガシーがインドネシアに遺っているように、日本軍が日本人に与えたレガシーも遺っているだろうと、わたしたちは話し合っています。今後は、日本政府がインドネシア人や日本人それぞれに対して、どのような食糧政策を実施し、今日までどのような影響が遺っているのかリサーチを行い、これまでの成果と結びつけていきたいと考えています」
「食と倫理」の過去、そしてこれからの未来を、ともに考え続けられるようなかたちで取り組む、バクダパンのリサーチ・プロジェクトの今後から目が離せない。
次週5月16日は、セルゲイ・ロズニツァという監督の映画作品について、美術家・映像作家の藤井光さんへのインタビューをお届けします。ベラルーシ生まれ、ウクライナ育ち、ロシアで映画を学び、新作を発表する度に国際映画祭で賛否両論を巻き起こし続けるロズニツァ。日本でも話題を呼ぶ諸作品は、歴史を鋭く抉る映像で知られる藤井さんの目にどう映るのか。衝撃の現代社会論が飛び出します。お楽しみに。
【WORKSIGHTのイベント情報】
『WORKSIGHT 19号 フィールドノート 声をきく・書きとめる』刊行記念トークセッション in 京都!
なぜ語るのか、なぜ聴くのか、なぜ書きとめるのか?
──山下正太郎と若林恵が語る、最新号制作秘話
19号「フィールドノート」特集の刊行を記念して、5月12日(金)19時より、京都・丸太町の書店「誠光社」にてトークセッションを開催いたします!
その企画・編集・制作を通して考えた、「聞くこと」「書きとめること」の難しさ、面白さ、可能性などの取材秘話を、本誌編集長・山下正太郎と、コンテンツディレクターの若林恵(黒鳥社)が、いつも通りざっくばらんに語ります。関西圏にお住まいの方はぜひこの機会に誠光社にお越しください。お待ちしております!
■日時:
2023年5月12日(金)19:00〜
■開催方法:
会場観覧 および オンライン配信
■参加費:
(会場観覧)1,500円 + 1ドリンクオーダー
(オンライン配信)1,500円
■会場:
誠光社
京都市上京区中町通丸太町上ル俵屋町437
■出演:
山下正太郎(WORKSIGHT編集長)
若林恵
■お申込み
※会場観覧とオンライン配信はお申込みページが異なります。ご注意ください。
ワークサイト・ラジオ:「WORKSIGHT 19号」刊行記念インスタライブ
会場観覧席もご用意しています!
19号「フィールドノート」特集にご協力いただいたゲストをお迎えして、5月10日(水)18:00からの3時間、ラジオの特番のようなインスタライブを開催いたします。
今回は配信に加え、特別に会場観覧席をご用意。配信のベースキャンプとなる下北沢のコクヨ・サテライト型多目的スペース「n.5(エヌテンゴ)」でトークをお聞きいただけます。出演時間外の編集部メンバーと、WORKSIGHTニュースレターやプリント版の企画についてお話しできる機会も設けております。お近くの方はぜひ会場にお越しください。
■日時:
2023年5月10日(水)18:00〜21:00
■TIME TABLE:
18:00-18:30 オープニングトーク(山下正太郎・宮田文久・若林恵)
18:30-19:20 ゲスト:志良堂正史さん(手帳類図書室)
19:20-20:10 ゲスト:永井玲衣さん(哲学者)
20:10-21:00 ゲスト:荒川晋作さん、関川徳之さん(「川」編集部)
■開催方法:
会場観覧(要申込) および インスタライブ配信
■参加費:無料
■会場:
コクヨ・サテライト型多目的スペース「n.5(エヌテンゴ)」
世田谷区北沢2-23-10 ウエストフロント1階(下北沢駅より徒歩4分)
■ホスト
山下正太郎(WORKSIGHT編集長)・若林恵・宮田文久
■会場観覧のお申込みはこちら
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【書籍詳細】
書名:『WORKSIGHT[ワークサイト]19号 フィールドノート 声をきく・書きとめる Field Note』
編集:WORKSIGHT編集部
ISBN:978-4-7615-0925-5
アートディレクション:藤田裕美
発行:コクヨ
発売:学芸出版社
判型:A5変型/128頁
定価:1800円+税